中学の図形・相似はなぜ難しいのか?/数学が得意な生徒があまり努力し開く手もできる理由
この分野の応用問題だけ高校の数学の考え方を必要とするから
中学の数学では、方程式であろうと関数であろうと、代数関係の問題では解法丸暗記でOKです。難問も解き方が複雑なだけで一度理解しておぼえれば大したことはありません。
幾何の「合同」であっても同じようなものです。公式や解法を当てはめるパターンを把握しておけばそれですみます。だから、この分野の中学2年生の図形でつまずく優等生はあまりいません。
高校の数学の考え方とはどういうことか
ところが、相似だけは一筋縄ではいきません。理由は、公式を使う基本的な解法が組み合わされる高校生レベルだからです。
高校の数学では公式を代入する基本問題を丸暗記したところで、その基本問題が組み合わさり応用問題になるので、中学の数学より無数にパターンが出てきて、そのパターンも条件によって解放の場合分けなどのバリエーションが増えて丸暗記では通用しなくなります。
だから、「これはどう解くんだろう?」と問題を一から考える生徒では解けないのです。どの解法が組み合わさって、何をやらせようとしているのかという出題者の意図を把握できない生徒は解けません。 この思考回路が出来合い生徒が、丸暗記の中学数学は何とかなっても高校ではつまずく生徒です。
そして、このアプローチが中学生には難しすぎるんです。だから、丸暗記優等生では相似は苦手です。
数学が得意な生徒は、なぜあまり努力しなくてもできるのか?/料理の得意不得意と同じです。
このアプローチ方法を「○○メソッド」のように簡単な画一的な方法で身に着けられることはありません。ああでもない、こうでもないと一度泥沼の中を這いずりまわって自分で考え方えて、自分で「こう考えていく」と身につけなければできません。
私はこの過程を料理によく例えます。レシピを見て材料を測り、オーブンで指示通りに焼けばできる料理は中学の数学です。あるいは中学受験の算数です。勝敗は、レシピをキチンとおぼえているか、そして覚えているレシピの数によります。だから、中学受験や高校受験塾では膨大な宿題を出し、生徒に繰り返し暗記を迫るわけです。
ところが、高校の数学は、「冷蔵庫にある食材で、美味い物を作れ。=この条件で、問題を解け。」と言われているようなものです。美味いものを作るには、食材の味や特性を知り、その組み合わせでどういう料理を作らせようとしているのか出題者の意図を測らないといけません。
「この材料はこういう料理で使った。こっちはあの料理。でも、二つ使うにはどうするの?」のレシピ丸暗記では対応できないのはお母さんのご存じのとおりです。そして、料理の内容も、「何分、何度で煮る。」などでは、材料の組み合わせも分量も違うのですから対応できません。料理の具合をいながら条件を自分で変えていく必要があるのです。この条件の場合分けは数学の応用問題で必須です。
この料理法や数学の解法を体得するには、苦労して実地体験をして、失敗を繰り返し経験を積みあがていくしかないのです。料理のヘタな人、数学が苦手な人はこの経験から何も学ばずに、いつまでもレシピ通りにしか作れない人です。「様子を見ながら料理して・・」と言っても「どういう様子ですか?」としか考えられない人間が料理などうまくなるはずがありません。
でも、この勘所を一度把握すると、イタリアンであれ、日本料理であれ、中華であれ、どの料理でも適当にレシピを見れば「ああ、そうするのね。」と出来ます。この状態が、数学の得意な生徒です。解法丸暗記など必要なく「こういうことね。」と考えられる土台に乗っているのです。
苦労して一度この土台を手に入れると数学の学習時間はあまり必要なくなります。問題はこのレベルにまでたどり着ける生徒が少ないということです。他の生徒には数学は難解で奇妙なものになります。