数学ができない理由/中学レベルで解説
こういう授業や解説をボケ~とみているだけだからです。
この投稿者を批判しようというわけではありません。ほとんどの典型的な授業です。この解説者が説明しているのは、解答や解説に書いてあることを順に読み上げているだけです。
そうして、ほとんどの生徒は「フン、フン、そうしたら解けるよね。」と思い、「分かった。」と答えます。これが数学の成績が上がらない生徒の学習方法です。下位の生徒は聞き流して「分かった。」で終わりです。「分かった。」と言った次の瞬間に、どんな問題を学習したのかも忘れています。公立中学の通知簿3です。
少々マシな生徒では、この授業を聞いているだけです。一生懸命に聞いているだけで「どう解くのか」と頭を動かしていないから、おぼろげに断片的に解法が頭に残っているだけです。同じ問題が出たとしても、テストで「次はどうやるんだったけ?」と解法を再現できない。これが公立中学の通知簿4です。頭を動かして「自分ならどうするか」と考えるのではなく、そのまま受け入れるだけで、自分ではできないのです。
でも、通知簿3の生徒に「しっかりと聞けよ!」と言っても、通知簿4の生徒に「どこがポイントで、どうしたら解けるのか自分でも考えよう。」と言っても、出来ないのです。通知簿3の生徒は頑張る垣根が低いので、いい加減にでも授業を聞いている=精一杯だからです。通知簿4では「そんなこと言われても、考えるということが分からない」からです。だから、こういう生徒の成績を上げるのは極めて難しい。学習指導以前に問題があるからです。
どうしてこんなことになっているか? それは公立中学の通知簿が、親の感触よりも高くつけられているからです。中学受験で阪神間では学力が高い生徒の多くを含む半数が私立に通います。残りの生徒が通う公立中学では上位25%に通知簿で5がつき、その下の25%で4がつきます。さらにその下で半分以下の30%の生徒に3がつくのです。中学受験が今ほど盛んでなかった親世代の通知簿2の生徒に3がつき、3の生徒に4が付いているからです「公立中学の成績分布の恐ろしい実態/通知簿5は昔の4、通知簿3は昔の2」。通知簿2の子供が「しっかりしていない」、通知簿3の子供が「何をどうするのか分からない」というのであれば、親御さんも納得いくのではないでしょうか。
じゃあ、数学ができる生徒はどう聞いているのか?/応用問題が解ける理由
三角比でも解けないこういう中途半端な図形の場合、角度や辺の長さの関係がキーポイントになっています。ただ一つの条件だけでは解けなくて、2つ以上の条件が必要です。それは三角形の合同や相似の定義から明らかなわけです。だから二等辺三角形という条件を用いて、低角の角度を出す。低角が72°の頂角の倍になっていて、二等分線を引けば二等辺三角形がさらにできる。その等辺の関係を利用すれば、相似関係で解けます。
ということは、こういう応用問題は基本問題とは違って、問題文や上の動画の表紙になっている図形の「定義」や「定理」を丸まる使えば解けるものではなく、問題の条件を利用して自分で使える「定義」や「定理」を作っていかなければなりません。そのためには、問題の条件や、こういう解答を丸読みしている授業から「問題の条件を利用して自分で条件を設定する。」ことが出来なければいけない。
この問題の場合は低角が倍になっていて二等辺三角形に分割できる。だから相似比が使える。こういう問題は、角度や辺の長さを注意して、相似なんかに持ち込めという題意なのだ、とこの解説を聞きながら理解するのです。でも、そんなことができる生徒は、ごくごく少数です。公立中学なら通知簿5の上半分しかいないでしょう。
では、なるべく多くの生徒に、こういう応用問題の解法を分からせるには講師はどうすればいいのか?
講師に必要な能力
この動画のように、解法を授業で板書するだけの教師や講師がほとんどです。けれど上の欄に書いたように、まず「こういう中途半端な図形は、角度や辺の長さで同じところに印をつけて、角度や辺の関係から二等辺三角形などを見つけて相似に持ち込む!これがこういう問題の意図、題意だ!」と、まずポイントを説明して、問題を解く方向付けを解説しながら授業を展開していかなければいけない。そうして、最後に、「問題の題意は角度や辺の長さに隠されている。まず図示して題意を考えろ!」と念押ししなければいけない。
これで公立中学なら通知簿5の下半分は解けるようになります。でも、大半の授業は、ポイントの説明もなく、ダラダラと解法を説明する授業がされる。あるいはダラダラと書いてある問題集の解答だけがある。この状態では公立中学の通知簿5の下半分では自分でポイントを把握できないんです。理由は、上に書いたように、このレベルの生徒は親世代の通知簿4だからです。
だから、ポイントを提示し、確認する授業が必要です。
生徒に必要な能力
「他の生徒にもできるようにしろ!」と多くの方はおっしゃるでしょう。無理です。能力的に難しい。
だから、その生徒ができる問題を示して、難しい問題には手を出さずに、出来る問題を丁寧に確実に得点して70点を取らせることが、公立中学通知簿4に出来る指導になります。
通知簿3では、「その前に、漢字や英単語キチンとおぼえる努力くらい、中3のテスト前にやろうな!」になって、学習を教える以前に性根を指導することになります。
各階層の能力が最大限発揮できるように指導することが塾の仕事で、「通知簿4で題意の把握ができない」生徒に90点を取らせることではない。それは魔法使いの仕事です。酷い書き方ですが、これが現実です。「大丈夫です。神戸高校行きましょうね!」と通知簿4の子供に安易に言って入塾を誘う塾の方が、私には酷いことを言っているように思えます。