中高一貫校は中学から4年以上高校の学習をする。それでも、関関同立にも合格できない生徒がなぜ多いのか?
中高一貫校で4年間も高校の学習をして、普通の学習が出来ない現状を認識しましょう
阪神間では、男子では3位レベル、女子では2位レベルの中高一貫の進学校の大雑把な進学先は、上位3割で神戸大、真ん中少し上では関関同立です。「関西学院大学は親世代の甲南大レベル/それでも関学が名門になった理由」などにも書いてきましたが、関関同立の入試問題は難しくありません。学校から配られたチャート式などの問題集や一般的な入試用の問題集を学習していれば合格できます(例外として同志社の数学だけは難しいですが、受験生の多くは解けないので他教科間との調整があります)。
代表的な例を挙げると、数学では上に書いた通り青チャートで十分です。英語は学校から配られるVintageなどの文法問題集や基礎英文問題精講レベルの長文読解が出来ていれば十分です。数学を例に挙げると、関関同立の合格ラインは、多くの場合6~7割です。ということは大問の中で(1)の教科書レベルの問題と(2)の黄色チャートレベルの問題を解いて、(3)の少し難しい問題で「これは無理だ」と思えば捨てればいいのです。
古文なども、基本的な文法問題集を終えた後、一般的な入試用の問題集をしていれば大丈夫ですし、社会は教科書をキチンとおぼえていれば大丈夫です。理科はシグマやαなどの学校から配られる問題集が出来ていれば大丈夫です。
ここまでに記載した問題集は、全てこのレベルの学校で配られる問題集です。同じものではなくても類似のものが配られています。それを高校3年生の夏までは一生懸命学習しておいて、それから過去問題でもやって理解不足な頻出分野があれば復習しておけばいいわけです。これらの問題集は特殊なものでもなく、多くの公立の高校でも配っているごく一般的なものです。
しかも、国公立大学とは違い共通テストもないわけですから、文系なら英国社、理系なら英数理の3教科だけキチンと学習していればいいわけです。
しかし、そのごく普通の学校の学習や問題集を、これらの上位の中高一貫の私立でさえ、半分近い生徒はできていないという現状があるわけです。中学受験をして高い授業料を払って、高校の学習を前倒しで学習して、高校の学習に4年間かけて大学受験の準備をする私立は、高校に入ってから高校の学習をする公立高校に比べて圧倒的に有利です「「国立大学の理系には公立高校から現役では難しい?/中学受験は必須」。
それでも、この有様になっているわけです。
なぜそんなバカげたことが起こるのか?
理由は2つあると思います。一つは授業進度の問題です。「「公立校の皆さん、私立中学で使っている「体系数学」と言う教科書の意味が分かっていますか?」にも書いた通り、多くの中高一貫校では中学3年生、早い学校では中学2年生から高校の学習が始まります。新しい学校に進むわけでもなく、中学生の意識のまま急激に難しい高校の学習に突入していきます。
中高一貫進学校の生徒のレベルでは、中学の学習はとても簡単で、学校の授業を聞き宿題を適当にこなしているだけでそれほど理解不足にはなりません。ところが、高校の学習はこのレベルの生徒でも簡単には進まず、高校3年間の学習を2年間でとはなりません。キッチリ3年間かけて行います。それだけ難しいのです。ところが、同じ中学校のまま意識を変えるきっかけもなく、難しい高校の学習に突入していくわけです。
高校の学習は中学の学習とは違って、授業を聞いて適当に問題を解いて、分からなかった問題は解答を見て書き写しておけば出来るような代物ではありません。自分でなぜそういう解法になっているのか考え、自分で解法のポイントを押さえ、そして自力で問題を解けるようにしないと高校の学習はできるようになりません。そういう学習に変えるきっかけもなく、高校の学習が進みだし落ちこぼれる生徒が多くいます。
ところが落ちこぼれていても「まだ中学だから」と改善策を取らず、高校1年生になって「高校になったから」と塾に来る生徒も多いのです。ところが、もう1年間は終わって落ちこぼれた1年の学習よりさらに難しい高校2年生の学習が進んでいる状況で、遅れを取り戻しながら今の学習に適応するなどとても難しいことになります。
だから、この時点でこのレベルの進学校でも半分近い生徒が3教科さえ満足に学習できていないとうことになります。
学校の問題点
こんなことは毎年毎年100人単位の生徒で起こっていることです。学校側が分かっていないはずはありません。ところが、「高校に入ったらしっかりやらないと!」と学校が指導することは、ほとんどの私立でありません。ただ教科書と時間割が変わるだけです。クラブ活動もそのままで、学習内容だけが激変します。子供も中学の気分のまま同じように学習して、見事に難しい学習に落ちこぼれます
。でも、半数の生徒でこのようなことになっていると知りながら、適切な学力別編成で適切な指導をしているという話は聞いたことがありません。クラス分けは高校に入るときに、あるいは高校2年生になって進路別のクラス編成を作る際に、落ちぼれた後になってやるのです。
特に特定の中高一貫の進学校では、高校の基礎も教わっていない状態で、「それ大学の授業?」というような難解な学習を子供に投げつけて「ホラ、オマエら分からないだろう?」と悦に入っている研究者崩れでしかたなく教師をやっている人間の欲求不満のはけ口に子供がされていることも多いです「進学校のメチャクチャな授業で分かる親の知性/子供の将来」。
こうして中学の学習分野には通用したが、高校の学習には通用しない学習を、同じ制服・同じ学校で意識を変えることが出来ず、時にはメチャクチャな授業をされて落ちこぼれ、高校になった時にはもう高校2年生の授業が始まって取り返すことが出来ずにズルズルと行ってしまう生徒が中高一貫の進学校には多いです。これが優秀な生徒を集めて、半分は関関同立にも合格させられない「進学校」の実態です。
生徒側の問題点
こういう状態の進学校の生徒も預かり、どういう学習をしないといけないかアドバイスして指導するのですが、変えるのは大変です。学校の進度に沿っても学習できなかった生徒が、「今から頑張る」と言ったところで、その遅れを取り戻しつつ今の学習も並行してやることなど、時間の面でも努力の面でも相当な努力を必要とします。今キチンと学習している生徒の学習+復習になるのですから、今までの学習時間の2倍とかが必要になるわけです。
そこに、研究者崩れの教師のクソの役にも立たないメチャクチャな宿題が時間を取ります。だから、「そういう宿題は適当に放り投げろ。中学の成績は高校からの指定校推薦には関係ない。」と言っても、進学校の看板への忠誠だけは高いですから、塾の「最重要な英文法の学習を!」という指導を放り出して、役にも立たない教師の自己満足の宿題で「これ教えて下さい。」という生徒は非常に多いです。
そして、塾に来る親子に「もう数学を取り返すのは無理です。せめて英語だけは頑張って取り返して関関同立に行きましょう。」などと説明しても、「そんなことのために進学校に行っていない。国立大学に行けるように数学も頑張らせろ。英語も国語も理科も社会も頑張らせろ。進学校のせっかく言ってるだから、教師のヘンテコな授業でもいい点数を取らせろ!」ということになります。
「それじゃあ、クラブも辞めて、今までの分と今の分、今までの倍以上学習できますか?」と聞くことになります。すると「クラブ活動はこの子の生きがいです。クラブ活動も両立させてください。」なんて都合のいいことだけを言い始めます。
無理です「クラブを続けながら成績を上げたい」高校生は通用するのか?」。これまでここに書いた音を滔々と説明しても、頭は無視のいいことばっかり考えて現実を受け入れられないのです。
こういう生徒では、「中学受験でキミより下だった生徒が付属校でのんびり学校生活を楽しみ進学する大学にも行かれへんゾ!」と塾で尻を叩いても、ボケ~っとしたまま。 中学受験で尻を叩いても高校では本性丸出しになるだけなのです。
親の問題点
進学校に入れたんだからと、中学受験で一息つく親が多い。
それで気が付けば子供は落ちこぼれている。進学実績を見れば国立大学など無理かもしれないと高校に入ってから焦って塾に駆け込んでくる、
でも、数学は落ちこぼれ、肝心な英国も学力不足で実際には関関同立も難しくなってきている。
この状況になって、相手は思春期真っただ中です。今の子供は成育が遅く、男の子なら高校に入ってから反抗期が来て、親の言うことなど聞かない。その上、生育の遅さに伴い状況を判断できない。で、子供が気が付いた時には手遅れになっている。そのころには親も投げている。
その上、上に書いたように本性は怠け者の子供が無理やり進学校に入っていることも多い。進学校や進学科の数が増えて優秀な生徒は分散し、県下で名前を轟かしている進学校でも真ん中少し上でやっと関関同立になっている。まだ言うことを聞く小学生の間に尻を叩いて、そんな進学校に中下位で放り込んでも、高校では本性丸出しになってダラケる子供がとても多い。
無理やり中学受験で尻を叩かないとソコソコの進学校に行けないようなら、どうせ上限は関関同立。神戸大はムリ。だから、中学受験で関関同立の付属校に放り込んでおくべきだったんです。そういう情報さえとれば分かることを考えもせず、目の前の中学受験に狂った親も愚かなのです。