国際科・英語科の怪/英語が得意な高校生が通っているのになぜ基礎英文問題精講も読めない=関関同立も合格しないのか?
国際科・英語科の高校とは?
国際科や英語科などの高校では、片親が外国人で家庭では英語で会話しているネイティブの子供から、帰国子女でそれに準じた英語力を持つ子供、そして少し英語が得意で英検2級や準2級を中学で取って進むような生徒がいます。
そして、このような英語が得意な生徒を集めて「国際的に活躍できる人材を育成する」というお題目で学校が運営されています。
ところが、このように英語が得意な生徒が通う高校で、英語の他に国語と社会1科目さえ叩き込めば進める関関同立に合格できる生徒は「少ない」と言ってもいいレベルです。
もちろん、日本語が不自由なレベルの帰国子女で国語も社会の教科書も読めないというのなら分かります。でもこういう学校でもそのような生徒は少数派で、多くの生徒は日本語に不自由はしていません。特に英検を取って入る生徒などは日本育ちで、高校入試の際に学力テストであったり全教科の調査書も評定に入るので普通科の高校の生徒と全く同じです。
私が不思議に思うのは、「国際的な人材」と言うのであれば、国際的に活躍できる企業や組織に進めるよう教育しなくてははなりませんがそれが出来ていないことです。こういう学校が国際的の代名詞によく使う交換留学とか英語のレポートより前に、最低でも関関同立に進ませることを考えなければいけないと思うのです。なぜなら、このラインに大企業などで働けるかどうかの学歴フィルターがあるからです「学歴の意味/大学別就職先と学歴フィルターを考える」。出来れば神戸大程度には入らないと、大きな商社やメーカーなどに就職できない=国際的に活躍するってどこで働くの?ってなりませんか?それとも草の根活動家やyoutuberでも目指せと?
いくら高校で留学生を受け入れていても、外国の高校に留学生制度があっても、英語でレポートを書かせていても、子供たちの英語人生がそこで終わるレベルの大学にしか進めないのなら本末転倒だと思うのですが、いかがでしょうか?
「英語が得意なだけの普通の高校生」の恐るべき結果=英語が得意ではなくなっている
ミドリゼミに来る国際科等の生徒で多いのは「英語が得意で国際科などに行った普通の生徒」です。英語なネイティブ並み、あるいは片親が外国人なら外国の大学への進学もあるのだと思います。でも普通の生徒は普通に日本の大学を受験します。
そして、その普通の生徒の多くは、関関同立にも行けない状態に追い込まれてから塾通いを考えた方が多いのです。特に驚くべきことは、国際科と言う割には英語だけを考えても関関同立に十分ではない学力の生徒も多いのです。
では、得意だったはずの英語でなぜこんな酷いことになってしまっているのか?それは、高校で文法などの学習をしっかりしていないため、高校2年生の後半から模試の英文が難しくなり始めると対応できなくなり、当然本番の入試でも対応できなくなるからです。
英語が得意ではなくなっている理由
理由は「中学で英検2級を取ると却って高校で英語の学力が落ちる・・・場合が多い」に書いた内容とほぼ同じです。
中学で英語が得意で国際科などの高校に進学しようとすると英検を受験します。英検の英文は難しくないため、塾などでは文法を固めてキチンと文章を読ませるより、単語をおぼえさせて適当に並べてなんとなく意味を取れるように対策を打ちます。
そして英検を取って国際科に入っても普通科の高校生と同じ高校1年生の教科書です。教科書は英検の準2級レベルと、英検対策で身につけた単語力で十分対応できます。その上学校の授業も普通科と同じで、リーディングだけではなく文法の授業も通り一遍の説明だけです。「ここの文章は単語を並べて読んでいるような生徒は勘違いする。こういう文法や構文の構造になっている。」などの説明はしません。
それで単語力だけで「なんとなくできるから」と適当な学習を続け、高校2年生の後半になって文章構造が複雑になってくると模試の英文が読み切れない。偏差値60程度しか取れない=関関同立に入れないとなってくるわけです。そして塾に駆け込んできます。
ミドリゼミの体験授業で有名な入試問題集の基礎英文問題精講を解かせて、「キミの和訳は間違っている。単語を適当に並べるからそうなっている。ここの英文のingはどういうこと?」と詰めていくと呆然とし出します。「今までこんな授業受けたことがないの?」「ハイ」「そういう訓練を受けていないから少し複雑な文章が読めない。英作文も出来ない、英会話も出来ないんだよ。」と言うこと唖然とし出すことになります。
この基礎英文問題精講は有名な大学入試用の問題集で、結構難しめです。私の経験上、高校2年生の半ばからこの問題集にどうにか食らいついていき高校3年生で読めるようになる生徒は関関同立に合格します。これが難しくて無理だと泣きを入れて来る生徒は産近甲龍です。
おまけに、他教科の学力は弱い
もう一つ厳しいお話をさせていただくと、国際科に進むような生徒は「英語が特に得意で、他の教科もなかなか良かった」ではなく「英語だけが得意で、他教科は人並だった」から国際科に進むのです。全教科なかなか良くて英語は特に得意なら国際化など選ばずに神戸高校や長田高校に進んでいるはずです。
その神戸高校や長田高校でも真ん中少し上にいないと関関同立には進めません。
だから、国語や社会は人並み以上の努力をしないと関関同立には届かない。でも、そんなことをせずにクラブ活動を楽しんでいる生徒が多い。得意の英語でさえキチンとした学習を積み重ねずに関関同立には届かないのですから、もう絶望的に無理なわけです。
これが「英語が得意な国際科や英語科なら、他にたった2教科さえ学習すれば関関同立に進めるじゃん!」が通用しない現実なのです。
学校にも問題はあると思いますよ
こんなことは私が書くまでもなく学校側は分かっています。
上に書いたように国際科には上位の国立大学に進めるような学力の生徒は少ない。じゃあ、国際的に活躍できるような企業に就職できる下限の関関同立に入学させるために英文法を徹底させ、国語と社会1教科をなぜ叩きまないのか?
生徒にも「英語以外の教科も得意なら神戸高校行ってただろ?英語以外が弱いから国際科に来た。その神戸高校でも上半分にいないと関関同立には行けない。キミたち、せめて国語と社会死ぬ気で頑張って関関同立でも入らないと国際的に活躍できる企業に就職なんか出来ないで!」と言って奮起させないのか?
私にはわかりません。高校の組織は高校生活での国際化しか考えずに交換留学などを推進するが、卒業して長い人生を歩く生徒の国際的活躍は考えていない。意識高い系の「国際的活躍」を高校内での絵空事で考えているようにしか思えないのです。


