公立校の皆さん、私立中学で使っている「体系数学」と言う教科書の意味が分かっていますか?
体系数学とは
私立の進学中学校で一般的に用いられている数研出版の教科書です。とても多くの学校が採択しています。
ご覧のように代数と幾何とがワンセットで、1・2があります。1は1・2年用、2は2・3年用と書かれていますが、内容は普通の教科書と大差ありません。進学校では通常1を1年生で2を2年生で終わらせます。中学2年生までで中学3年分の学習をするということです。
文科省用に「1は1・2年生用ですよ~」と書いている表紙と、実情は違います。数研は3冊で別にいい内容をわざわざ2冊にして、実質2年間で終わらせ、中3からは高校の学習を始めるように作っているのです。進学校でトップクラスの学校ではこの4冊を中学1年生で終わらせ、中2から高校の学習に入るような学校もありますが、それは例外です。
この教科書が意味すること
ということで、多くの進学私立では中学3年生から高校の授業が始まることが当たり前になっているということです。
多くの私立では、高校の範囲では、通常の公立校とほぼ同じ速度で授業が進み、高1で数ⅡBCが終わり、高2で数Ⅲが終わります。これは、中学の簡単な数学なら進学校に進むような生徒は3年分を2年間で終わらせるのは無理のない学習進度であるが、高校の難しい数学ではそうはいかないということです。もちろん、公立の進学校も同じで、デキのいい生徒が多いからと数Ⅲまでを2年間で終わらせるなど、落ちこぼれを生むだけになります。
だから、カリキュラムが自由になる私立の中高一貫校向けに数研は目を付けたわけです。進学私立なら理系志望者でも高校2年生で数学の全過程が終わり、高校3年生では難しい国立大学の入試問題にアプローチする時間が出来るということです。このために体系数学はあるのです。一方で公立では、授業進度が速いトップ校でもやっと高校3年生の半ばで数Ⅲが終わります。共通テストは目の前です。そこから入試レベルに学力を引き上げ、共通テストの準備もするなど無理なのです。これは体系数学を使う私立が圧倒的に有利で、公立高校から上位の理系大学に進むことは非常に難しいことを意味します。実際、国公立大学の医学科には公立校出身などほとんどいません。
文系では公立でも高校2年生で数学の全過程が終わりますので、理系ほど不利ではないので、別に中学受験を無理にさせる必要もないかとは思います。一方で、理系で上位の国立大学や医学部に行きたいのであれば、中学受験は必須なのです「経済格差は学力格差の理系/でも文系志望なら公立も私立も関係ない」「国立大理系は公立高校から現役ではもうムリ?/理系なら中学受験は必須」。
この現状が体系数学と言う教科書に表れているのです。数研出版はその現状を織り込んで代数・幾何とも2冊の教科書を「中高一貫校用」に作って、中高一貫私立はそれを利用しているのです。
ダメ私立は理科で見る
一方で、英語や国語と言った主要教科はほぼ高校2年生で全てのカリキュラムが終わるので、ここまで状況は厳しくありません。だから進学校でも公立中学でも使っている教科書で、同じような速度で授業をしている学校も多いです。
問題となるのは理科で、進学校によっては理科は高校3年生に積み残す学校があります。数学は数研の作った学習スケジュールに乗って教えているだけですが、こういう構成の教科書になっていない理科には学校独自で何の対策もしていないのです。高校3年生で数学が出来ていても理科がこんな体たらくでは、理系でいい大学や医学科は無理じゃん、ということになります。
教科書会社におんぶに抱っこだけで、学校自体は計画性も何もない進学校も多いです。だから進学校の真価を見るには、理科の学習スケジュールを見ればいいと思います。
一方で公立中学・高校では
私立の進学校が高校の数学を始めている頃に、公立中学の優秀な生徒は受験用の中学の難問対策をしているわけです。方程式の長ったらしい文章題など解いても、アホみたいな難解な相似の問題を解いても高校の学習には全く役に立ちません。それで高校に入ってから、私立に1年遅れで高校の学習を始めるわけで、理系ならタイムアウトになるわけです。
大阪府などが進学校用にわざわざ難しい高校入試問題を用意して、進学塾熱を煽っているのは本当にバカげたことです。その一方で、それ程シビアな入試状況にはない英語で実質は英検2級で入試得点の代用が必要な状況にしています。英検2級は高校の学習範囲を学んでないと通りません。実質、大阪府の高校入試は文科省の学習要綱からは逸脱しているのです。そんなことだったら、数学こそ数ⅠAの範囲を堂々と入試問題にしたらいいのです「大阪府公立高校のC問題入試のバカさ加減」。
他方でトップ公立高校の親子では
この状況で、公立のトップ校に入ったから得意満面で「文武両道!クラブも医学部も!」なんて言っている親はバカです。今の公立中学から公立高校に進む生徒の大きな問題は、「デキが違う」レベルの生徒の大半が中学受験で抜けていることが、子供だけならまだしも親まで頭から吹っ飛んで学力を勘違いしていることです。 兵庫県なら通知簿オール5の中学生が最高位の神〇高校や長〇高校や兵〇高校やらに真ん中ぐらいで進んでもせいぜい関関同立なのに、勘違いして「クラブと両立で充実した高校生活を送って神戸大」と平気で言う。
神〇高校で学年30位など、少しデキがいいだけでまったくもってデキが違うレベルではない。全く大したことはない。クラブなんかの時間があれば全力で予習しないと大阪大学なんか無理です。断言しましょう、無理です!
因みに、文系は神戸大学でもいいとは思いますが、理系は大阪大学に行かないとダメだと思います。私の経験からも、神戸大学と大阪大学では理系は就職の差が大きい。神戸大学の学生は京大などの大学院に進まないとダメですよ!