共通テストの数学に見る探求思考力問題のクズさ/探求も思考力も必要ない。慣れるのに時間がかかるだけ/中高一貫私立のカリキュラムが有利になるだけ
一昨年度の共通テスト追試の数ⅠAの問題です。
ひと昔前のセンターテストでは、チャート式の解説や解答中に穴埋めがあり数値などを入れていくような問題が主体でした。
ところが、共通テストになり「探求」とか「思考力」とか言い出した末の問題がこれです。これ探求とか思考力とか必要ですか? ネット上で買い物や契約をするときに「この注意事項を読んで納得したらYesを押して進んでください」系統のわざと長ったらしい読む気を失わせる系統の文章と同じ臭いが私にはします。
書いてあることは単純で読み取るのにも考えるのにも探求も思考力も必要ありません。しかし、けれども遠回りさせて読むだけでウンザリして思考力を奪うように書いてあるサブスクや保険の契約の際に読まされる注意事項と同じ系統のものとしか考えられない。
これで探求や思考が測れるんでしょうか?

これで探求とか思考力とか測れるんですか?
こんな問題が理数科目では多くなり、探求や思考のためではなく、問題を読むためだけに多くの生徒が時間内に問題を解き切れなくなってきています。そして、この問題を見て分かるように、この長ったらしい文章をじっくり読んで図などを見比べて、「こんな並べ方は、この文章には入らないの?」などと探求して思考するように考えると時間内では解けません。
文章をざっと読んで、図を見て「こういうふうに隙間なく並べろって言うこと書いてあるだけね」と大雑把に把握して解いていかないと時間切れになります。思考力の前に、「こういう問題が出るから、問題をじっくり読んで考える」のではなく、「こんな問題だよね、例年出るんだよ、こんなの。」と言う慣れから大雑把に把握していくしかありません。
これが探求と思考なのでしょうか?
私には「素早く解く共通テスト対策」をしていない生徒は得点できないだけの受験技術にしか見えません。
英語・国語などでも同じです
文章をキチンと読んで検討することなどできません。
国語では段落ごとに何を書いてあるか読み飛ばし、選択肢のと対比して「これは書いてある。これは書いてない。」と判断していく技術がまず求められます。英語も簡単な長い文章を単語の意味を並べて読み飛ばしていくような読解が求められます。
これは探求や思考などと言えるようなものではなく、ただの速読の技術ではないのかと思います。
それまでの学習とは大違い、準備期間が必要
多くの受験生が共通テストの過去問題を始めてまず面食らうのが、それまではじっくりと考えて問題を解く、あるいは文章を読んで考える「探求・思考」の学習をしていたのに、急に全く頭の回転のさせ方が違う「いかに効率よくさばいていくか」と言う技術を求められることです。
多くの高校生はこのような学習も、日常生活での対応や選択もしたことがないために、こういう傾向の問題に慣れるのにかなり問題を解く必要があります。2~3年分の問題を解いただけで慣れる、対応できる生徒を私は見たことはありません。8年分程度の問題を解く必要があると、多くの生徒を指導した経験から思います。
となると、共通テストの学習にほぼ専念しても3ヶ月程度の時間が必要になります「共通テストの過去問や対策問題は何年分くらいするのか?」。
この共通テストの準備期間は、ここで示したような普段の学習から縁遠い問題が出題される傾向が共通テストになって強くなり、一層の長くなってきています。
これは公立高校から理系に行くことを阻止して、詰め込み教育の中学受験を推進しているだけ
共通テストの準備期間をキチンと取るには3年の2学期が始まるとすぐに共通テスト対策を始めなければいけません。これは3年の夏休みにはほぼ二次試験の入試問題を選択科目で解けるようにしておかなければいけないということです「共通テストの準備を3年の9月から始めるとはどういうことか?/1年生から綿密な学習計画が必要」。
共通テストも二次も私立もと3年の2学期から両立してできる学習時間はありません。そして、共通テストが終わると半月で私立、1ヶ月で国公立の二次です。その間に共通テストの基本問題しかできない生徒が上位私立や国公立の二次の問題に対応できるまで学力を引き上げられるはずもありません。
だから、3年の夏休みには高校の学習はほぼ完成していなければならない。これは公立高校の理系には無理な注文です。だって、数Ⅲや理科の学校の授業さえまだ終わっていないのですから。これは中高一貫の私立が数Ⅲを高校2年生でほぼ終えるのに比べて、圧倒的な不利を意味します。まだ応用問題さえ解き始めていない時期に目の前に共通テストがやってきて、それが終われば見たことがないような難しい応用問題を国公立の二次のために解かなければいけません。1ヶ月で何とかなる代物ではありません。そのせいか、上位国立大学の理系や国公立大学の医学科は圧倒的に私立中高一貫校の生徒が多くなっています「「国公立大学医学科合格者は中高一貫私立ばかり」という新聞記事が出た/でもその理由までは書いていないので説明します」。
最近の共通テストを見ていると、このような受験生の負担も考えずに、専門家が「文章長く、まわりくどく書けば考えるんじゃね?」的安易な持論を振り回して、ごく普通の勉強してきた公立高校の生徒に圧倒的に不利な状況を作って、一層小学校から詰め込み教育を行う中学受験を推し進めているだけのような気がします。


