子供を見極める絶好の教材/中学の社会の教科書/そして公立高校の数学の入試問題と国際科の生徒たち
多くの中学で教科書を使わず、プリントを配布する理由
多くの中学で教科書を使わず、プリントを配布して、授業中に重要語句を書き込ませるような授業をします。公立中学では過半数以上の生徒が教科書を読めない、中学受験した私立組も半数の生徒は教科書を読めないからです。
理由は? それは長い文章を読み取る力がないからです。
例えば、中学1年生の2学期に学習する「宮崎平野は沖に暖流の黒潮が流れているため冬の気温が高く、春物野菜を他の生産地に比べて早く収穫できる。このような栽培を促成栽培と言う。こうして早期に収穫した野菜を大阪や東京などの消費地に運べば高値で売ることができる。そこでビニルハウスなどの施設を作り、より早期に収穫する施設園芸農業も盛んである。」という、非常に論旨が明確で、言葉も簡単な文章を読み切れないんです。
理由は、二つです。一つは二行以上の文章になると、論点が把握できないことです。黒潮→冬気温が高い→早期収穫→高く売れる、という論理展開が把握できないんです。
もう一つは、A=B B=CならA=Cという発展的論理展開ができない。早く作れる→高値で売れる=促成栽培と、より早期栽培→より高値で売れる→ビニルハウス=施設園芸農業の二通りの文章があるんですが、まったく別々のものとしてしかほとんどの生徒は認識できない。促成栽培+施設園芸農業=より早い収穫→ぼろ儲け、とまでは書いていないから、なぜこの二つが一緒に書かれているのか分からないんですよ。
だから、中学校では、「宮崎平野は( )栽培。」「ビニルハウスを使う( )農業」と1行で書いたプリントを配って、授業で埋めさせるしかない。
こういう子供を塾に連れて来て成績が上がると思います?
そして、こういうプリントでないと「分からない」という子供は、当然のことながらテストが目の前にぶら下がってきても( )をおぼえる気もないんですよ。それで、先生が親切に配ってくれたプリントすらチラ見する程度で、テストで重要語句をことごとく間違えてきた子供を塾に連れて来て「勉強方法さえ分かれば・・」なんか親は言うわけです。
いや、教科書読まれへんのは私ももう諦めてますよ。けれど、重要語句もテスト前におぼえる気もない子供連れて来て「勉強方法」って言う安直な親の子供なんか教えられるはずはない。
私は体験授業には、必ずテストの問題と答案を持ってきてもらいます。そこで社会の重要語句や国語の漢字の大半を間違えている答案を親に突き付けて、「テスト前に暗記すらする気がないんです。ご存知でしたか? 勉強方法を教えて解決すると思いますか? やる気がないんですよ。やる気がない子供を教えても成績は上がりません。その性根を叩き直さないことには、私の塾でもどの塾でも、どこの学校でも無理です。」と申し上げ、顰蹙を買います。
公立高校の入試問題との関連
で、兵庫県の数学の文章題はこうなります。2019年度のものです。毎年同じような、方程式・関数の問題が出題されます。別に内容が難しいものではありません。
でも、2~3行ですむ文章題を、わざわざ別々に書いたり、速度を燃費に置き換えたり、図表で表現したりして、読み取るのが面倒にしてあるんです。これは、数学の問題と言うより、論点を整理できるかと言う全教科共通の問題への出題なわけです。
まあ、(4)は中学生の関数の応用で定番の難問ですので、最上位校の選定に使われると思います。中堅校なら(2)、御影でも(3)ができていれば十分だと思います。
でもね、(1)も(2)も出来ない=問題に何が書いてあるのか分からないか、単位計算もできないほど基礎学力がない生徒が、中学2年生ではほとんどです。こういう子供が、3年の冬休みになって、こんな問題を全くできずにおしりに火がついて、やっと真面目に勉強し出します。「中学3年の冬休みまで本気を出さない子供たちの将来」の通りです。
それで、(1)(2)だけは解けるようになって中堅高校に進みます。15歳になって、初めて、やっとまともに脳ミソを動かしたんです。そんな体たらくの子育てを15年間してきた親が悪いんです。
その尻拭いを「小金払ってやるから、あと1年でどないかせい。勉強方法さえ教えれば何とかなるやろ?」って言ってきてるの、分かってます? 無理っす!
じゃあ、中学社会を読めるようになる対策とは?
正直、公立中学の半分、親が付きっきりで尻を叩いて中堅の私立中学に放り込んだ生徒では難しいんじゃないかと思うんです。そもそも論理的思考がないんですから。
でもね、この論的思考を育成するなんて、不可能なんですよ。少なくとも、私は成功したためしがないです。ある子はあるし、ない子はないし育成しようもない。中学生を経験の長い私が教えて無理だと言ってるんですから、お母さんが中学受験で小学生を教えてどうにかできるなんて不可能です。だから、付きっ切りで暗記学習を少しでも押し込むしかなったんです。
もし、小学校高学年で図書館に連れて行って、何か興味のある本を見つけて、自分から読むと言わないようだったら、諦めてください。中学受験の無理やり暗記学習で尻を叩いても、どうせ中学や高校に進む反抗期の年齢で地が出てきて元の木阿弥になります。
国際科の生徒も良い例です
最近流行りの公立校の英語科・国際科に進む生徒は、小さい頃から英会話などを習わせて中学時代に準2級ぐらいは取っています。ということは、もう少し学習すれば2級=関関同立の合格レベルに近いレベルは高校で楽勝で取れるわけです。
じゃあ、主要科目の英語など基礎から教える必要もない子供を集めている芦屋近辺の国際科の生徒たちの進学実績はどうなっているのか? 惨憺たるもので、古文と社会1科目を3年間で何とかすれば合格できる関関同立にも、ほとんどの生徒が進めない。「英語が得意な国際科はなぜ関西学院に合格できないのか?」
英語が喋れるネイティブでも、英語の社会の教科書も読めないし数学も出来ない外国人は腐るほどいるわけです。それと同じで、結局、幼いころから学習して少し得意な英語で高校に入れても、「理解力」が必要な他の科目がネックになってにっちもさっちも行かない。
英語が得意で他の教科も得意なら、国際科など行かずに神戸高校に行っていたわけでしょ? その神戸高校でも真ん中の成績で関関同立がやっとなんですから、国際科で「社会おぼえられへん」なんて言っている子供に無理なのは当然なことなんです。
英語だけいくら幼稚園から習わせても、その英語を使える企業に就職し、職業に就けないのであれば無意味です。料理や土木や看護の専門学校にでも行かせる方がマシです。