日本人が働かなくなった/子供は勉強しなくなったし、浪人する気概もない
夜遅い電車の乗客が減りましたよねぇ・・・
ほんの15年くらい前までは、終電間際の電車でもかなり混んでいました。バブルの頃のようにお酒を飲んだ帰りのご機嫌な方々ではなく、疲れ切った仕事帰りの方々でです。ところが、最近は夜遅い電車は空いています。
残業時間の上限規制が強化されたからです。これは上から下まで、管理職も含めて、同じような給与体系で働き、同じような管理で働く会社員に労働基準法が働くからなんでしょう。労働時間規制の強化とは裏腹のホワイトカラー・イグゼンブション=職能評価は会社員には結局適応されなかったようです。
緩くなった社会の影響は子供にも及び、塾の子供を見ていても、一昔前より努力する子供は減ってきています。そりゃあ、家に帰れば父親がダラダラ酒を飲んでいるのを見れば、あるいは家族団らん至上主義で子供を遊びに誘うのを見ていれば、自分も頑張ろうなんて思わないのだと思います。
失なわれた20年と言われ日本が競争力を失ってきた下降曲線と、この夜遅い電車の乗客数の下降曲線は妙に一致しているように思えるんです。
日本はもう勝てないんじゃないか?
ところで、アメリカのエリート層でも、このような緩い労働環境なんでしょうか? 徹底的な職能主義=能力主義が導入されているエリート層では、緩い労働で評価される仕事ができるはずもありません。
それをよく表すのはこの記事です。「週98時間労働、燃え尽き症候群…過酷な労働条件でもゴールドマン・サックスにはインターン希望の学生が殺到 | Business Insider Japan」日本の基準だと週48時間残業、月に200時間の残業がアメリカのエリートの平均的な繁忙期の仕事量だそうです。
インターンの学生も酷使され過労死がゴールドマンで起こってから、「深夜12時以降のインターンは禁止」というアメリカのエリートにしたら「緩い基準」が採用されました。「ゴールドマンの過労死対策、「勤務は午前0時まで」|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)」
もちろん、その代わりに年収数千万円の報酬が用意されているんです。だから、大学生も死ぬ気でインターンを頑張って認めてもらおうとする。頑張っても年収1000万円の日本のエリートは、ホワイトカラー・イグゼンブションの対象ではなく、ブルーカラーの「9時5時で仕方なく単純労働をする。」層の給与と労働環境が用意されているということでしょうか?
シリコンバレーの技術者なんかも、フレックスタイムやリモートワークで会社にいる時間は少ないと言われていますが、家でディナーを家族と楽しんだ後は深夜までパソコンに齧りついているみたいですしね。
政府のマクロ金融政策の失敗もありますが、日本社会停滞の最大の原因は企業が競争力を失ったからです。その原因は日本人が働かなくなったことも大きいと私は思います。働かされているのは、中小企業で名前だけ管理職にされているような弱者だけです。
エリート社員もエリート生徒も頑張らなくなったから無理
日本では、定型の仕事を行うブルーカラーも、職能給で働きホワイトカラーイグゼンブションの対象となるエリート社員も同じ会社員として扱われ、意識に差はない。塾でも、エリート進学校に進んだ子供たちも、中堅校の生徒も意識に差はなく緩いままです。
「進学校とはどういうところか?/優秀な生徒を搔き集め、チャート式も理解させられず多くは関関同立で精一杯、そういうところです」などに書いてきたように、進学校の早く速い授業に落ちこぼれ、中堅高校の生徒と大差ない偏差値を取って中堅以下の大学に進学することになろうと、「そんな自分は許せない!」と言って、楽しみやクラブ活動を犠牲にして頑張る子供はほとんどいません。
現状に目を瞑り、目の前の安楽を享受し、緩慢な下降曲線に身を置いて大学受験前に取り返しの聞かない状態になっていることに始めて愕然とするんです。一人当たりのGDPが韓国やイタリアにまで抜かれた今の日本の社会や会社員と同じように見えます。
・・・だって、「浪人してでも上位の国立大学に行って良い将来をもぎ取る。苦労や辛抱は覚悟の上。」というような高校生などほとんどいません。みなさん、第2志望や第3志望の中堅私立におとなしく進学なされる。昔はそんな意識の低い子供はエリート進学校には少なかった。だから予備校が繁盛していたわけです。
子供は社会の鏡です。夜の電車を見ている限り、次世代を担う子供の頑張りは期待できません。日本はこのまま沈んでいくしかないと、電車と塾の教室を見ながら思う最近です。
少子高齢化は政府の言い訳にしか過ぎないことがこのグラフではよく分かります。欧州も少子高齢化で労働人口が減少しておますが、国のGDPは減っていない。それは一人当たりのGDP≒給料が増えているからです。
日本で利益の上がる企業や産業は、もはやごく少数なんでしょう。だから、エリートでも労働時間を制限して安い給与体系で働く。そんなエリートになったところで大したことはないから、アメリカのインターンのように自分を犠牲にしてまで頑張る動機が日本の受験生にはなくなっている。
この20年間、日本社会がダメになり、日本人が働かなくなり、子供は勉強しなくなったかというのが一目瞭然だと言うのが私の感想です。