秋と言えばブラームスの室内楽ですな/どんどんあざとくなっていく
ブラームスの白眉は室内楽だと思います。内省的なブラームスは、無理をして交響曲や協奏曲を書いていたように思えます。
素直な若い頃の音楽 21歳
この伸びやかな音楽。ブラームスって、やっぱりメロディラインを作る天才ですな。でも、レベル的にはほとんど素人作曲家の作品ですな! それにしても、すごいメンバーの演奏ですな。
あざとくなってきました。これぞ、私たちが期待するブラームスです。 47歳
作曲技術を詰め込み、思慮深いメロディを組み込み、意識高い系に受ける音楽満載です。ブラームスが生きた時代はドイツに産業革命が押し寄せ、小金持ちの市民が生まれた時代です。前の世代のベートーベンまでは主に大寺院や貴族をパトロンにして彼らの演奏会のために音楽を書いていましたが、この時代からは小金を持った市民相手に音楽ホールで演奏される音楽がビジネスになったのです。
ブラームスは台頭してきたブルジョワによくいた意識高い系の人たちに受ける小難しい音楽を書いたんです。ほぼ同じ時代に分かりやすく、パーティで踊ることもできる一般向けの音楽を書いたヨハン・シュトラウスなんかとは正反対です。
これ以前の音楽は、音楽の構成がメロディではなくアンサンブルの組み合わせからできている古典主義で、楽しむのにソコソコの音楽的な教養と知識が必要でした。だから、ハイドンなんかは今でもあまり人気がないわけです。でも大衆が音楽を楽しむようになり、「普通の人の普通の感性と音楽的教養」を対象にしたメロディラインと伴奏という形式を持った音楽が主流になります。これがロマン主義の音楽です。その間にいたのがベートーベンです。
成熟したあざとさ 53歳
意識高い系の老人「熱い枯れ専」をターゲットにした音楽です。人生を懐かしみ諦念した心と「いや、まだまだ枯れていない」と立ち上がろうとする心のせめぎ合いを、凄まじい作曲テクニックで見事に描き出します。鬱陶しい年寄ですな!
同時に、若い頃のように素直に音楽を書こうという様子も見えます。金も名声も手に入れたブラームスの終活ですな。とても設定が多い音楽になっております。