20年前は理系人気、今は文系人気

最近塾の生徒を見ていると、理系より文系を志望する生徒が多いと実感します。この理由を私なりに日本の凋落と受験制度ひずみという両面から考察してみたいと思います。理系を希望する高校生でも医学科が突出した人気を誇り、工学部などを志望する生徒は減っています。

技術立国日本の凋落

20年前はまだ日本の工業製品や日本の技術は世界のトップレベルでした。家電製品はソニーやパナソニックが世界を席巻し、サッカーのワールドカップやレースのF1のピッチやコースの横の看板を見ても日本の企業だらけでした。半導体もまだ日本はトップレベルでした。トヨタだけでなく日産や三菱自動車マツダなども世界のトップレベルの自動車会社で独立独歩していました。

この当時優秀な男子高校生のとても多くは理系に進んでいました。特に日本が圧倒的に優位だった電子関係の学部が人気でした。

ところが今日本はどうなっているでしょう。 20年前にトップレベルだった最終製品を作る大メーカーは凋落し、トヨタを除いたほとんどは中国、韓国、台湾の企業に置き換わっています。そしてこの20年間で相手の企業規模が競争しても追いつけないほど大きくなって、もはや壊滅状態にあります。

20年ほど前から日本の大メーカーの崩壊が始まり、日本の企業はリストラを開始しました。新入社員の採用も絞り、入社面接では圧迫面接という酷い扱いを大学生は受けていました。このリストラでは文系のホワイトカラー職が多く、当時のマスコミや父親たちは「専門技術のない文系の社員からリストラされる。リストラされても専門技術とある技術系の社員はまだ転職ができる。」と言い、その子供たちも「じゃあ理系の大学に行きます。」ということが始まりました。だからアベノミクス以前は積極的な意味でも消極的な意味でも、理系は人気でした。

10年前、電子から機械

日本の製造メーカーの凋落が始まってからも、唯一日本がトップレベルにあり生き残っていた分野がロボット分野です。日本の産業用ロボットの技術は世界でダントツでした。またヒューマノイドのアシモなども世界のトップレベルを走っていました。一方で、半導体などの電子技術は世界一の座から滑り落ちていき、受験先の人気は電子電気系統の学部から、ロボット工学の機械系統の学部に移りました。

ロボットもダメ、そして部品屋に成り下がった

ところが今現在日本のロボット工学は完全に中国やアメリカの後塵を拝しています。アメリカの巨大IT企業や中国政府の支援で莫大な開発予算を使い始め、日本など太刀打ちできなくなったからです。

現在日本に残っているの多くの企業は、コンピューターやロボットという完成品あるいはメインストリームのIT産業の部材を作るメーカーでしかありません。メインストリームのメーカーが数兆円売り上げたとしても、部材メーカーの売上など微々たるものです。中には「日本の部品がないと中国もアメリカも何もできない」という方もおられますが、それは20年前に「うちのネジがないとパナソニックはテレビを作れないんだ」と強がっていた弱小の町工場と同じように思えます。

その分野では名前を知られているかもしれませんが、一般人であれば名前を聞いたこともない部品屋のメーカーにしんどい受験勉強をしてまで入りたいと思う高校生はほとんどいないというのが現状です。まあ当たり前のことです。

最近NTTが、GAFAに基幹技術を提供する日本の次世代技術としてIOWN構想なるものを持ち出し、データセンタの通信やGPU周りの配線にまで光をつかって通信速度や消費電力を改善する提案をして、実際アメリカのGAFAなどと共同で開発しています。AIでネックになるのはGPUの計算速度でなく、膨大な電力が賄えなくなることです。だから光は次世代の基盤技術で、NTTは「光で次世代のプラットフォームの上流を握る」などと言っているのです。

しかし、IOWNの売り上げは、実際には数千億の売り上げに到達すればいい方で、設備投資に何十兆円と投資するGAFAの設備のごくごく一部を受け持つ部品屋・設備屋でしかありません。ドコモの5Gの設備投資も賄えないので、NTTの株価は「次世代のプラットフォーム」などと言う経営陣の宣伝文句を全く反映していません。日本では「次世代のIT産業の目玉」と注目されている技術を開発しているNTTでさえこうなのです。

こういう状況を見ていると、アメリカが日本の工業製品に完全に負けていた30年前、アメリカの優秀な学生のほとんどがハーバードなどの文系に進み、MBAなどを取って金融系の企業に勤めていた時期を思い出させます。

受験制度とコスパ重視が理系を潰す、理系で行くなら医者しか意味がない

以前から散々紹介していますが、理系、特に国公立大学の理系の受験は一般の生徒にはとても負担が高くなってます。ただでさえ数Ⅲや理科の負担が重いのに、それに加えて数Ⅲでは二次曲線や積分の計算の複雑化による負担の増加、理科では化学の向きなどの暗記の増大、生物では新分野の学習の増加など20年前の理系人気の頃の親世代の理系の受験よりも負担が重くなっています。

もちろん国公立大学ではそれに加えて共通テストがあります。この共通テストがとてもクセモノでマークシートという独特の解答だけでなく、「考える力重視」という名目で普段の学習や学校のテストでは目にしないような独特の問題を出すようになり、年々この傾向が加速しています。共通テストで数ⅠAなどで平均点が下がって難化したと言われていますが、これは問題が難しくなっているのではなく、独特の問題が増えて生徒がそれに慣れていないということです「共通テストで失敗しないために」「共通テスト 数ⅠA講評」。

ということで、上位の国公立大学を目指すにはこの面倒な共通テストを克服するためにとても長い準備期間がかかります。公立高校のように高校3年の半ばを過ぎてもまだ数Ⅲや理科を学習しているような学校では、実質現役で上位の国公立大学の理系の大学に進むのは無理になっています「国立大学の理系には公立高校から現役では難しい?/中学受験は必須」「国立大理系は公立高校から現役ではもうムリ?/理系なら中学受験は必須」。

だから中高一貫の私立では理系科目だけは早めに学習を進めるのです「中高一貫進学校と公立/どう違うのか?」「中高一貫の進学私立と公立高校の差を埋める指導」。

公立高校で浪人を覚悟して、あるいは中学受験の苦労をして入った学校でも早い進度の授業に苦労して理系に進みたいという高校生の多くは、収入も文系と変わりなく社会的地位も同じで、文系より苦労してまで普通の同じ会社員は考えていません。アメリカのようにIT技術者なら年収数千万円ではないのですから、当たり前です。コスパが悪い。

理系で選ぶとなると、収入が高いと言われていて、社会的地位も高い医者しかありません。だから圧倒的に医学科が人気なのです。ミドリゼミでも優秀な理系志望者はほぼ全員医学科志望です。まあ今となっては勤務医、特に公立病院の勤務医などでは会社員の給料の方がいい場合も多いですがね・・私は将来医学科も優位性は保てないと思っています。

だから、理系人気はなく経済学部が人気

この状態でコスパを重視する今の若者が理系など選ぶわけがありません。選ぶのは医学科などに進める上位のごく一部です。特に公立高校では浪人を覚悟しないと工学部にも進めないのですから、当然多くの生徒は文系を選ぶことになります「経済格差は学力格差の理系/でも文系志望なら公立も私立も関係ない」。

数学が得意な連中は理系に行かずに文系でも数学の配点が高い経済学部を選ぶ傾向にあります「法学部と国際学部の凋落と経済学部人気」。いうなれば、工業が凋落していた30年前のアメリカと同じ状況に今の日本はなってるわけです。

それに最近は人手不足で優秀な大学を出ていれば就職先など選び放題です。今や関関同立に進んでいれば名前の通った大企業にも就職できます。20年前には就職のリミットが神戸大学だった企業が、人手不足で関関同立に落としてきているような実感があります。そんな状況で、20年前のように「専門技術のない文系のホワイトカラーからリストラされる」など心配する高校生は皆無です。

理系で苦労して受験して、大学でも文系よりはるかにハードな授業を受け、おまけに大学院まで行っても待遇は文系と同じ。日本には技術者が優遇されるシリコンバレーはない。その上、理系では勤務先は田舎の工場や研究所で、東京や大阪勤務の文系と比べれは特に独身の間の生活の楽しみに関しては悲惨なことになります。誰も理系など行きませんって「理系選択の盲点「勤務先」/考えてますか?未来の生活」。

これが理系より文系、経済学部などの人気の現状です。

私が実体験で知る理系・文系較差

尚、文系の方には理系の勤務実態を知らない方も多いと思います。いい動画を見つけましたので、是非見て下さい。京セラに恨みはありません。私が勤務していた研究所も同じで、最寄り駅は無人駅で、1時間1本、しかも2両編成のワンマンカータイプで車内で切符を買う電車しか来ないという状況でした。最寄りのスーパーマーケットに行くにも、田舎道を制限速度無視で車を走らせて30分。こんなとこで働いて住みたいですか?

私の同僚連中も、こんなところに当時家を買ったのが多量にいました。だってこんな交通状態ですから田舎の研究所に電車勤務など不可能で、車通勤が可能な近隣に家を買うしかなかったからです。だから、当時はこんな田舎でも、この地域の工場など目当てに田んぼを潰した造成地で建売住宅が結構高い3,000万円以上で売られていました。その工場などが撤退縮小し、スーパーマーケットも撤退しています。退職や転勤で売りたくても、今やタダでも中古住宅など売れないことになっています。

同じ時期、本社勤務の連中は、多少値段は上ですが都内にマンションを買いました。バブル破裂後のデフレで価格は激下がりしていました。大企業の給料なら買えたのです。今や中古でも都内のマンション価格はバカ上げです。同じ会社勤務で同じ出世をしていたとしても、本社か研究所かと言う勤務地に差だけでも資産格差は膨大です。

それにこの動画のような田舎に女性が嫁に来ます?当時も都会で就職できるような女性=ほぼ文系は都会に出ていってました。ほぼ帝大の大学院卒以上の研究員は恋愛も出来なく、もうどうにもこうにもならない年齢に近くなって見合い結婚がとても多かったです。でも相手は都会で就職がないか、大企業と学歴の肩書で田舎でもOKと来るような女性です。

一方で本社の連中は、高学歴・大企業・丸の内勤務を肩書に都内で遊びたい放題です。合コンなど女の方から群がってきます。その当時、本社の連中を見ていて「コイツラが散々遊んで捨てた女の敗戦処理で俺らは見合いか?」と言っている同僚がいました。深く感銘したのをおぼえています。

文系連中は都内で自由に恋愛して、より取り見取りの中から女性を選び、結婚後は都会のマンションを買って快適に豊かに暮らして、中年になるとそのマンションは立派な資産になっています。研究所の大学院卒の理系連中は恋愛もなく見合い結婚して、スーパーマーケットに行くのにも苦労する環境で生活し、今やそのスーパーマーケットも撤退した地域で資産形成もなく暮らし続けています。退職したら家を売って都会の老人用マンションで快適に暮らそうなんてできないのです。車に乗れなくなった年齢になったら絶望しかありません。

アホらしくてやってられないっすわ。正直、理系出身の私でも理系なら医者しか意味はないと、「現時点では」思います。

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芦屋で500人以上、個別指導20年のベテラン講師が、毎日・全教科、中学生と高校生を指導します。御影高校・神戸高校、関西学院・同志社・神戸大学・大阪大学を目指す特進個別塾です。