神戸大と同志社は同レベルになった?/付属校と指定校推薦を乱造する理由/手の届く私立の名門化
有名大学の付属校・指定校推薦の乱造の結果/学生の質低下
多くの大学は、付属校を作り、それだけではなく学校法人を買収して新しい付属校を広げていきます。関西学院大学では、昔は関西学院の付属しかありませんでしたが、啓明などを傘下に収めて付属校の数を増やしています。また、指定校推薦の数も増やしています。名門の私立大学ではほぼ半数が内部進学や指定校推薦組です。関学に至っては7割が内部や指定校推薦で、一般入試やセンター利用では3割しか取りません。
けれども付属校の乱造は付属校のレベルの低下、付属校から入って来る学生の質の低下をもたらします。大学の先生が「付属校の生徒は質が落ちる」と学生に嘆いているのは、どの大学でも同じです。さらに、指定校推薦で進む生徒では定期テストの暗記対策は得意でも英語や数学などの入試レベルの学力がない生徒が多く、大学に入って落ちこぼれて指定校推薦の枠を減らされないように、合格後も高校では問題集を配って管理しています。
ということは、大学は自ら質の劣化を招いているということになります。関学や早稲田なら、付属校や指定校推薦など増やさなくても一般入試で十分に優秀な学生は集まるはずです。なぜ、こんなバカげたことをするのでしょう?
それでも少子化の中、偏差値を維持するため付属と指定校推薦を乱造する
その答えは少子化にあります。少子化が進み15歳未満の人口は、1990年の2254万人から2019年には1533万人に減少しています。受験生は35%も減少しているのです。ということは放っておけば、以前より質の悪い受験生が一般受験で合格することになって、大学の偏差値は下がることになります。
しかし、偏差値をキープするために大学の定員を絞るわけにもいきません。経営が成り立たなくなりますし、政府からの補助金の問題もあります。
その対策として、一般受験の合格者数を減らして偏差値はキープして、その減らした分を付属校や指定校推薦の枠を増やせば、すべて解決すると考えているのではないか?・・・と私は思っています。だって、中学や高校を作って、買収しても、それほど利益の上がるビジネスだとは思えないからです。あくまで大学の看板を守るために内部進学を拡充しているのではないか?
そのため。関関同立の指定校推薦の評定は、以前は4.3だったものが、多くの高校で4.0に下がっています。」」
逆に言えば、内部進学の拡充は大学の学生の質を捨ててでも、偏差値の看板を守っているというになります。その結果「最近の早稲田の学生は使えん」「採用してハズレだと思ったら、内部進学だった。」というのが増えていると聞いています。
ここで、偏差値の偏向が始まる/意図的な合格ラインの偏向
一方で、国立大学は付属校も指定校推薦もありません。一般受験の定員は変らず、少子化で減少した志望者の質低下はまともに受けます。この結果、最近の模試の偏差値は、私たちの感覚からは考えられないことになっています。それは国立大学の偏差値低下と私立大学の偏差値上昇です。
でも、いくら国立大学の定員が減っていないからと言って、この表に納得できる方おられますか? 私はまったく合点がいきません。
だって、普段から教えている私たちにとって実際の合格者の学力を考えれば、同志社や明治大学と神戸大や名古屋大、東北大と言った大学の偏差値が同じということは全くあり得ないし、大阪府立大学と武庫川の合格者が同じ学力だとはあり得ない。高校での学年順位も同じだということはあり得ないからです。「関西学院大学は親世代の甲南大レベル/それでも関学が名門になった理由」にも書いた通りです。
本来なら偏差値が違う国立・私立の大学ランキングを、上を揃えて順番に書いて、無理矢理同じ表で横に並べて書いてあるとしか思えません。あるいは、志望者数が少ない上位の国立では、志望者だけで順位をカウントすると偏差値が低くなる。それを志望者数が多くその中でカウントすると高くなる私立の偏差値と意図的に並べてあるようにしか思えないんです。ものすごく意図的なものを感じます。
内部進学を逆風にした名門女子大・追い風にした女子大
内部受験の影響をモロに受けて偏差値を落としている珍しい私立大学が一つあります。神戸女学院です。神戸女学院の中高はこの辺りでは最高峰で、生徒はほとんど内部進学で大学には進まない。だから、一般入試が主体になっている神戸女学院大学では少子化の影響をモロに受け、偏差値が下がり、それがさらに下のレベルの受験生を呼び込むことになったと私は推測しています。
まあ、神戸女学院の大学に内部進学してくれるように中学の定員を増やして、大学よりよほど金看板の中学の偏差値を落とすわけにもいきません。学校法人の規模も小さいから、どこかの女子高でも買収して、そっちを内部進学専門にすることも出来なかったのかもしれませんねぇ。内部進学を確保している武庫川や同志社女子などに、名門の神戸女学院が追い抜かされた原因はここなのかもしれません。
一方で、総合大学より定員が少ない女子大では内部進学者の比率は高くなります。だから、内部進学者の比率が低い甲南や近大より武庫川や同志社女子が難しくなっている。ホンマかいなと思いますよね?これも志望者が少ないから偏差値が高く出るってなことがあるのかもしれません。
とにかく、大学の名門化確保には内部進学が必須なのかもしれません。
私立大学と模試・出版会社の結託/ 手の届く私立の名門化
別にこの表は進研模試だけではなく、河合塾や旺文社も同じような感じです。私は、こういう受験産業が、わざわざこの表を作っているんだと思います。だって、この表があれば、私立大学のランクが上がって、自分達が展開している中学受験の塾により多くの子供を取り込めるからです。学校側も、この表の通り上のランキングがついて名門化すると、付属中学、場合によっては小学校からのビジネスが安定化する。
その結果、昔は上位国立を狙う進学校の子供しか中学受験はしなかったが、最近は猫も杓子も中学受験するようになった。その裏には「手の届く私立の名門化」があるのではないかと思っています。だって、この表のおかげで、手の届く私立を名門化しておけば、以前は中学受験しなかった層も中学受験するからです。
親御さんや子供と話していると、皆さんこの表がおかしいことは分かってらっしゃる。だから、大阪大や神戸大には行きたいが難しいかもしれない。けれど、同志社には行きたいし行けるかもというふうになってきています。私立は名門化しているが手が届くと相反したことを皆さんが受け入れて塾に行っている、あるいは付属校を受験するのではないかと実感しているんです。
大学と結託した受験産業の思う壺ですな・・・。