塾の指導でいちばん大切なこと
成績が伸びないマジメな子供は多い
塾に毎日通い、マジメに勉強してそれでも成績が伸びない生徒は多いものです。同じ授業を聞き、同じ指導を受け、それでも成績が伸びる子供もいれば、伸びない子供もいます。これは、学校の授業でも同じことが言えます。
もちろん、多くの教師や親は、「マジメに聞いていない」「キチンと学習していない」からと考えるでしょう。けれど、それは子供に絶望を与えるだけで、何も解決はしません。彼らは、自分なりにはマジメに聞き、学習しているんですから。
以前も書きましたが、私の塾でも買ってもらった自分の問題集を何度もやり尽くし、塾に置いてある問題集も制覇し、もちろん学校から渡されている問題集も塾でフォローしている生徒でも、何度も同じ基礎問題を間違え、何の進歩もなく、テストで頭を抱える成績を取ってくる生徒もいます。一方で、学校の宿題を短時間で効率よくこなし、自分で少し復習するだけでソコソコの点数を取る子供たちもいます。
その差は頭のネジが動いているかどうか
この差は何なんでしょう?
それは、授業や指導を聞く時に漫然と「そうなんだ~」と聞いて、説明を聞いただけで「分かった」と考えている生徒と、「ココがポイントで、この問題ではこうなっているんだ。」と考えながら聞いている生徒の差です。
問題を解く上でも、以前も書きましたが、間違えた問題で解説など読まずに正解を赤ペンで書き入れ「出来ました。」という生徒と、「この問題はこのポイントを考えれば良い。」と考えて正解など書き入れずに解答冊子を熟読している生徒の差です。
錆びついているネジを動かすのは難しい
この頭をまったく使わない子供たちに、「ポイントをつかめ」「何を分かっていないのか考えろ」と言っても、そんな事ができるわけはありません。だから私の塾では、長々と説明するのではなく箇条書きで「こういう問題はこう書いてある」「だからこうを見る」「それはこの公式を使えということだろう」と説明しますが、「そうなんだぁ~」で終わりです。翌日聞いても、同じ問題を解かせても全滅します。
こういう子供帯は、うろ憶えの式の形や解法を真似て解こうとするだけで、「こう考えるんだから」「このポイントを使って」とは考えないんです。
脳みそがまったく働いていないから、解法をいい加減に丸覚えするだけなんです。「こう考えて」と論理的に考えることは出来ない。だから、おぼえれば良いようにこちらが用意して挙げて目の前に差し出ても「いい加減に丸覚えする」だけだから、テストで解かせると全滅することを繰り返します。
バカの壁
一時期バカの壁と言う言葉が流行りました。人間は考えていない考えや価値観を受け入れることは出来ないというものです。それには、今までそういう考え方をしたことがないから思考回路がまったく別のものは受け入れられない壁があるという意味なんですが、成績が伸びない子供場合「頭のネジが回らない」という数ランク低いバカの壁があるんですよ。
例えば、同じことは料理なんかでも如実に表れます。料理のヘタな人は、「強火で何分煮る」というレシピ通りの料理をするだけで、材料の煮具合や臭いも観察せず、味見もせず失敗を際限なく繰り返します。「こうなるということは、こんな事になってるからだ。」と観察できないんです。そういう人は、どの料理教室に通っても誰に教えられても、レシピ通りに作れるお菓子しか焼けません。
こういう方に、「こういう具合になったら・・・」とか、「こういう音がしてきたら・・・」と言っても、まるっきり通じないし、そもそもそんなに観察しながら料理をしようとする気がないんですよね。勉強もまったく同じです。
逆に「こうなっているんだ・・」という考えを持てる人は、洋風家庭料理を学んだだけでも、日本料理でも中華料理でもなんでもモノにしてしまいます。勉強も同じです。例えば数学で考え方をモノにした子供は、ほぼ全教科の成績が上がります。数学が通知簿4で英語や国語が不得意でも2という子供は極めて珍しい。逆に数学が通知簿3で英語だけ5というのは帰国子女以外はない。料理とまったく同じだと思います。「考える」ということが出来ているか否かの差だけです。
塾の指導でいちばん大切なこと
塾で「解法」を教えて伸びる子供は、上位の私学や公立高校に通っている子供、公立中学では通知簿が4以上で埋まっている子供だけです。彼らは、考えることや努力することは身についているから、後はテクニックを教えるだけでいい。ところが「成績が悪くて・・」「他の塾でもダメで・・」と塾につれてこられる生徒にいくら解き方を教えても、それこそ穴の空いたバケツに水を入れているようなものです。だから、塾の仕事は、まず穴の空いたバケツを修理することだと思います。
ところが、この修理は大変で、多くのバケツは直らない。だから、進学塾などは通知簿が3主体の生徒は受け入れないんです。苦労が多く、成果が上がらず、悪評ばかり広まるからです。