大学入試で必要な学力は模試の学力~定期テストは良いのに模試がダメな高校生の特徴

高校生は期末テスト真っ只中、あるいは直前ですね。その後に模試なども控えている高校生も多いでしょう。今日は、定期テストと模試に必要な能力も学力も違う、そしてそれは大学の入試にも大きな影響を与えるという話をしましょう。

これを読んでいる皆さんでも、「定期テストはいいのに、模試はダメ。何で?」という方は多いはずです。まずは、ここがどう違うのか、脳の仕組み(知能の構造)から率直にお話しします。

1. 定期テストと模試で求められる「学力とIQ」の決定的な差

人間の知能は、年齢や役割によって以下の3つに明確に定義されています(知能のCHC理論・システム1と2)。

  • ① 処理速度/システム1(速い思考)【中高受験・定期テストのIQ】 画面の情報をパッと処理したり、記号や暗記したパターンを反射的に当てはめてスピード解決する「脳の瞬発力」。
  • ② 流動性推論/システム2(遅い思考)【大学受験・模試のIQ】 未知の難問や複雑な論理を前に、脳の作業机(ワーキングメモリ)をフル活用して、15分も20分も粘り強く仮説と検証を繰り返す「深い思考のスタミナ」。10代後半が発達のピーク。
  • ③ 結晶性知能/包括的な知恵(Wisdom)【大人のIQ】 学校の勉強、読書、人生の経験を通じて得た知識が体系化された「大人の知恵・大局観」。50代・60代で全盛期を迎える。

学校の「定期テスト」は範囲が決まっていて、応用問題も少なく、どれだけ問題集の解法を覚えているかが勝負になります。問題数も多く、暗記した結果を素早く吐き出せる能力が必要です。したがって、定期テストは問題集の解法を丸暗記するスピード、つまり「①処理速度(システム1)」さえあれば、真面目に努力する子は誰でも高得点が取れてしまいます。考えて解くよりも、丸暗記した内容を反射的に吐き出す「作業」だからです。中学受験や高校受験の多くも、この浅いIQの力技で突破できます。

ところが、大学入試や実力を測る「模試」になったら「②流動性推論(大学受験のIQ・システム2)」です。 模試は既習の全範囲から出題され、しかも大学入試問題に準じて数問の応用問題が主体です。学習分野のポイントや解法のしっかりとした理解がないと解けません。ある程度時間をかけてじっくりと考えて解く能力が必要です。

中学受験や高校受験を「暗記のスピード(システム1)」だけで突破してきた子は、高校に入ってこの「深いIQ(考える体力)」を要求された瞬間に模試でまったく点数が取れなくなります。

2. 小学校の準備とIQの開花でハッキリ分かれる「4つのタイプ」

高校生になると、中学時代には見えなかった「定期テストの成績」と「模試の成績」のズレがはっきりと現れます。これは、小学生・中学時代にどんな脳のインフラ(土台)を作ってきたか、そして高校の学習で求められる「大学受験のIQ(システム2)」が開花したかどうか、そして本人が生まれ持つ「努力できる遺伝子(自制心・勤勉性。行動遺伝学において努力の才能の約半分は遺伝です)」が起動するかどうかで、以下の4つのタイプに完全に切り分けられます。

まず、皆さんは高校でどの位置にいるか確認して、学習方針や進路設計を考えることが大切です。

  • タイプA:両方良い(小学生でのインフラ完成 × 高いIQの開花) 小学生時代にそろばん、公文、中学受験などを戦略的に利用し、圧倒的な「基礎の自動化(インフラ工事)」を終え、高校生になって「じっくり考える脳(システム2)」も見事に開花した、トップ校の最上位層です。
    • 進路: 努力できる遺伝子も持っていれば、学校の順位通りに東大・京大、あるいは医学部などの最難関に進学します。
  • タイプB:定期テストは良いが、模試はダメ(小学生での「丸暗記」の弊害 × 中高受験のIQの呪縛) 小学生・中学時代に、進学塾などで「問題と答えを丸暗記するスピード(システム1)」だけを叩き込まれてトップ校に入った子です。真面目なので学校の宿題や定期テスト(狭い範囲の暗記)はこなせますが、「自分の頭でウンウン唸って考える大学受験のIQ(システム2)」のインフラが作られていないため、模試になると全く点が取れません。進学校の最上位以下に大量発生します。
    • 進路: 詳細は後述しますが、指定校推薦の枠からも漏れ、一般受験に必要な「模試の学力」がないため、関関同立の一般受験にも全落ちし、最終的には定期テストレベルの知識で届く「産近甲龍(甲南大など)」へと沈んでいきます。学校の成績がいいので危機感がなく、実は一番手遅れになりやすい、最も危険な層です。
  • タイプC:模試は良いが、定期テストはダメ(小学生時代のアナログな試行錯誤 × 大学受験のIQの後半開花) 小学生時代にスマホに脳を破壊されず、パズルや自然体験などで「泥臭く試行錯誤する土台」を脳内に仕込んでいた子です。中には、処理速度/システム1(速い思考)に依存する中学受験や高校受験ではトップ校には届かなかったかもしれませんが、高校生になって「努力できる遺伝子」を持っていれば「大学受験のIQ(システム2)」が覚醒します。
    • 進路: 模試が良ければ指定校推薦など狙う必要もありません。一般受験に必要な「本物の思考力」を持っています。「独力で解けるまで考え抜く」学習で、数学などで成果を上げだし、学校の定期テストなどの順位を無視して、一般入試で志望大学に進む層です。
  • タイプD:両方ダメ(小学生時代からのデジタル汚染 × 脳のインフラ機能不全) 小学生時代からスマホのショート動画にドップリ浸かり、じっくり考えるスタミナ(システム2)を脳の臨界期(12〜15歳)までに完全に破壊されてしまった層です。中高受験のIQも、大学受験のIQも育っていません。
    • 進路: 定期テストの暗記すら拒絶し、解答を読んで書き写すような学習を学校の宿題で続けます。それなりの大学に進むしかないでしょう。

3. 進学校の優等生(タイプB)が一般受験でなす術なく失敗するメカニズム

ここで、一番真面目に見える「タイプB(定期テストはいいが模試はダメ)」の子たちが、進学校でなす術なく落ちこぼれていく本当の理由を説明します。彼らはサボっているわけではありません。「中学時代の成功体験」が呪縛になって勉強法を変えられず、どう勉強していいか分からなくて暗闇で溺れているのです。

① 「大学受験のIQ(システム2)」の壁とパニック

高校数学や英語の初見の長文は、15分も20分も机にかじりついて粘り強く考えないと解けない仕組みになっています。しかし、中学受験や高校受験を「問題と答えを丸暗記するスピード(システム1)」だけで突破してきた子は、深い思考を受け止める脳の体力が育っていません。

当然、最初の模試で見たこともないような悪い点数を取ります。ここで子どもは「なぜ模試だけ悪いんだろう?」と思いますが、多くの場合それまでの学校のテスト成績優先の経験から学校外の模試の結果の重要性をあまり理解できていません。

その上、「定期テストの成績がいいから」と、中学時代の成功体験にしがみついて、 「今までは頑張って暗記して成功してきた。だから、点数が取れないのは自分の暗記の量が足りないからだ」とk名が得てしまいます。 本当は「丸暗記をやめて、じっくり本質を理解する勉強」に変えなければいけないのに、「もっとたくさん解法パターンを丸暗記する」という、間違った方向へさらにアクセルを踏み込んでしまうのです。

② 「どうしていいか分からない」生徒たち

そいうい高校生はどうなるでしょう? 脳はすでに、丸暗記だけで乗り切れる容量をオーバーしています。どれだけ時間をかけて暗記をしても成績は上がらず、脳も体も限界を迎えます。

「頑張って暗記しているのに、模試になると全く点数が見込めません。どうしていいか、本当に分からないんです」

そう訴える真面目な生徒は本当に多いのです。彼らは過去の成功法則にしがみつくあまり、自分一人ではどうしてもシフトチェンジができません。その上、シフトチェンジして脳の配線を改変しようとしても、受験までの残り時間があまりにも足りないのです。

4. 「指定校推薦」か「一般入試」か。学校の環境に応じた冷徹な戦略

この「能力と学習の違い」を分かった上で、私たちは冷徹に受験戦略を選択する必要があります。通っている高校やコースの環境によって、取るべき計画は真逆になります。

【戦略A】私立高校の下位コースなら「システム1(定期テスト特化)」で逃げ切る

もしお子さんが、私立高校の特進クラスではなく「進学クラス(下位コース)」に所属していて、その学校に上位私大の指定校推薦の枠がたくさんある場合は、割り切って「システム1(丸暗記・定期テスト対策)」に特化するのも非常に賢い作戦です。 文系私立に腹を決めて、数学から綺麗に逃げ、英語と古文に特化して学習労力を減らす。学校の宿題を丸暗記して、定期テストで学年上位をキープして評定を稼ぐ。これで関関同立の指定校推薦を勝ち取れるなら、これほど合理的な計画はありません。

通常私立では特進コースでは指定校推薦枠はありません。「自力で行け」です。自力で行けない下位コースに推薦枠を割り振り進学者数が増えれば学校はウハウハだからです。

【戦略B】多くの公立進学校では「システム2(模試の学力)」がないと全滅する

多くの公立の進学校や、私立の最上位コースでは話が全く変わります。 塾の指導でもよく問題になるのですが、理系なら数学や英語、文系なら英語や国語の学力をまず上げるように指導すると、「それでは学校の成績、指定校推薦はどうなるのか?」と言い出す親や生徒が多すぎます。

よく考えてみてください。あなたの通っている高校に、それほど上位大学の指定校推薦の枠があるのでしょうか? 国公立希望であれば、総合型選抜のような推薦枠はごくわずかで、ほぼ一般受験一本槍です。学校推薦というのもありますが、多くは地方大学で、そんなところに行くくらいなら就職からも下宿代と授業料の金銭的負担からも関関同立に自宅通学した方が賢い。

それに、特別推薦があったとしても学校の調査書は参考程度です。レベルの違う様々な学校から受験生が押し寄せるのですから、進学校と中堅校の「評定4.5」を大学側はどう区別するのですか?だから、ほとんどの国公立大学の特別枠は共通テストの受験が必須で、その得点で学力を担保します。結局、この点では一般入試と変わりありません。

関関同立でも、学校の評定と英検2級だけの自己推薦枠(総合型)はそんなに多いですか? あってもスポーツ推薦など一芸入試の枠が多くないですか?つまり、大多数の生徒は一般受験の土俵で戦うしかないのです。

それにもかかわらず、学校の成績が良いだけで、タイプBの子がそのまま一般受験に突っ込んだときの結果は悲惨です。 多くの方はご存じないでしょうが、関関同立以上(もちろん国公立大学の二次試験も含みます)とその下の私立大学では入試問題のレベルが完全に違います。関関同立以上の入試問題では、「システム2(高い応用力・思考力)」が必要とされます。

模試の学力がない生徒は、どれだけ学校の成績が良くても全落ちします。文系私立に腹を決めて数学から逃げるのは構いませんが、その残った英語と国語でさえ「学校の宿題」を言い訳にして目先の面倒な応用力育成から逃げるヤツは、関関同立には絶対に合格しません。

5.結論 模試の成績を上がろ!

どれだけ中高受験の時の処理速度が高くても、努力の遺伝子がなければ高校数学や難解な英語長文の段階で流動性推論(システム2)が育成されず、文系であっても上位の国立大学(阪大・神大など)は無理になります。進学塾で「何が何でも神戸高校!」と、丸暗記脳を叩いているだけでは無理なのです。

一番大切な大学入試でものをいうのは、どの高校に進学したかという過去の実績ではなく、「流動性のIQ」と「そのIQを全開に出来るように自分で誘惑を断ち切って頑張れる力の総合力」です。どちらかの学習を優先しなければいけない場合、志望大学の二次試験や一般入試に対応できるように学力を上げていくことが最優先されるべきなのです。

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芦屋で500人以上、個別指導20年のベテラン講師が、毎日・全教科、中学生と高校生を指導します。御影高校・神戸高校、関西学院・同志社・神戸大学・大阪大学を目指す特進個別塾です。