大卒のブルーカラー化、しかも本当のブルーカラーには収入で負けつつある

大卒のブルーカラー化

「とりあえず大学を出ておけば、将来は綺麗なオフィスで安定した生活が送れる」

今でもこの前提でお子さんの進路を考えておられる方が少なくありません。しかし、海の向こうのアメリカで起きている雇用の地殻変動を見ていると、その常識はすでに過去のものになりつつあります。

今、労働市場の最前線では「大卒のブルーカラー化」とでも呼ぶべき現象が進んでいます。そして残酷なことに、その大卒たちは、長年現場で腕を磨いてきた「本物のブルーカラー」に収入でも資産でも惨敗しているのです。

今回は、いま起きている雇用の現実と、これからの進路選択において本当に必要な視点についてお話しします。

大企業から締め出される「並みの大卒」

かつての大企業は、中堅大学を出た新卒を大量に採用し、下積み業務を通じて数年かけて育てていました。

しかし現在、そうした定型デスクワークはすべてAIに代替されつつあります。企業側からすれば、多額の育成コストと初任給を払って未熟な新人を雇うより、AIツールを使って少数のベテランに処理させた方が圧倒的に速く、安上がりだからです。その上、この定型業務をおぼえさせた頃には「ステップアップ」だと言って、同じような定型業務の横滑り転職をされてしまいます。企業にとって、そんな新人を育てることはリスクだけになっています。

結果として、大企業が求める新卒は「AIが出力したデータを鵜呑みにせず、判断ができる抽象的思考力を持ったごく一部の人間」に限られるようになりました。選抜のフィルターは極端に厳格化し、トップ名門大学出身者だけで枠が埋まってしまいます。

その影響はデータにも如実に表れています。ニューヨーク連邦準備銀行の調査では、22〜27歳の直近大学卒業生の失業率は5.6〜7%台で高止まりしており、全米平均の失業率(約4%)を大きく上回る逆転現象が起きています。大企業はもはや、「普通の大卒」をオフィスワーカーとして雇う理由を失っているのです。「超一流大学じゃないと大学卒の意味はなくなる? ジョブ型雇用を勘違いしていないか?」。

中堅・中小へ押し出された大卒の厳しい給与事情

「ニューヨーク連邦準備銀行の調査では、直近の大卒失業率が5.6〜7%台と高水準ですが、問題はそれだけではありません。 就職できた人のうち約4割が『不完全雇用』——つまり、せっかく大学を出たのに大卒資格を必要としない店舗販売や単純事務、配達などの仕事に就かざるを得ない状況に追い込まれています。

実質的に、大卒にふさわしいオフィスワークに就けているのは半分程度に過ぎないのです。」大企業のデスクワークから弾かれた一般の大卒生(約4割が不完全雇用)は、中堅・中小企業の一般事務、受託業務、販売やカスタマーサポートへと押し出されます。

米国における彼らの年収推移を見てみると、厳しい現実が浮かび上がります。

  • 20代前半(初期年収): 約4万〜4万8,000ドル(約600万〜720万円)
  • 30歳前後(中堅実務層): 約5万5,000〜6万8,000ドル(約820万〜1,020万円)
  • 30代中盤以降(管理職・課長クラス): 約7万5,000〜9万ドル(約1,120万〜1,350万円)

物価高の米国では、この給与水準からさらに高額な学生ローンの返済が重くのしかかります。米連邦準備制度(FRB)などの調査によると、学部卒生が抱える学生ローンの平均残高は約3万7,000〜4万ドル(約550万〜600万円)に達します。標準的な返済プランでの月々の支払額は平均約500ドル(約7万5,000円)前後です。

ローン返済後に残る手取りは月2,000〜2,500ドル程度です。アメリカの都市部では、見知らぬ他人とルームシェアをしても家賃で1,000〜1,200ドル、高騰した食費や日用品で500〜700ドル、光熱費や通信費で約300ドル、さらに車社会の保険・ガソリン代で300〜400ドルが消えます。

切り詰めて生活しても毎月の生活費だけで2,100〜2,600ドル近くかかり、手取りは1ドルも残らないどころか毎月赤字です。病気や車の故障といった急な出費があれば即座にクレジットカードの借金(リボ払い)に頼るしかないのが、オフィスに就職した「並みの大卒」の実情です。だから、普通の就職があっても車上などで生活する若者が増えていくわけです。

しかもこの道には途中下車がある

問題はこの30歳前後の実務ができるそうから30歳中盤以降の管理職になるステップアップです。この時に給与も上がりますが、ただ実務を覚えるだけでよかったジョブ型とは違い、管理職になるには管理職なりの資質が必要です。しかも実務ができるような若手は、次から次へと下から上がっていきます。

結局、給料だけが上がり、若い社員でも替えが効く業務をやっているジョブ型雇用では、この段階でリストラされることになります。これはアメリカだけのことではなく、日本でももうすでに始まっています。昔リストラというと50歳代以上の窓際族という感じでしたが、新聞などを見てもお分かりのように、今やリストラは30歳半ば以降にまで降りてきています。

これはこのようなジョブ型雇用の、また違った面での悲惨な現実と言っていいでしょう。

アメリカではこの段階で多くの中年が、中所企業の定型業務やアルバイトなどに職を変えざるを得ず、所得が下がっていくことも多いようです。

「本物のブルーカラー」の所得

一方で、AIには絶対に代替できない現場を担う熟練職人たちの待遇は跳ね上がっています。

彼らは大学の借金を背負うことなく、給与をもらいながら学ぶ徒弟制度(Apprentice)を経て現場のプロになります。

  • 20代前半(見習い明け直後): 約5万〜6万ドル(奨学金の借金ゼロ)
  • 30歳前後(一人前の熟練工): 約7万5,000〜9万5,000ドル(時間外手当を含めると10万ドル超)
  • ベテラン職長・親方クラス: 約11万〜14万ドル超(約1,650万〜2,100万円以上)

さらに数人の職人を抱えて下請け工事を請け負う「親方(独立事業者)」になれば、年収15万〜25万ドル(2,000万〜3,500万円超)を稼ぎ出す者も珍しくありません。

中堅企業のホワイトカラー管理職が年収7万〜9万ドル前後で伸び悩む一方、現場を仕切る親方は11万〜14万ドル以上を稼ぎ出す。しかも職人たちには奨学金の借金もありません。20代前半から借金ゼロで貯蓄を始めているため、30代時点での「純資産の差」はさらに大きな開きとなっています。

確かに仕事によっては、年齢が上がると肉体的に厳しい仕事もあります。しかしよほどの肉体仕事でなければ重機なども発達している今、中年以降も続けられる仕事はほとんどです。しかも本人に資質と信頼があればステップアップしていけます。別にブルーカラーだから最後まで泥にまみれて低収入、ということもありません。

「中小から大企業へ下克上転職」というネットの嘘

「大企業に入れなくても、まずは中小企業で実力を磨いてから大企業へ転職すればいい」 「下積みを経て大企業の管理職へステップアップする」

ネットの広告や動画ではよく見かけるストーリーですが、企業の実態を知る大人なら、これが完全な作り話であることは、ある程度の年齢になれば誰でもお分かりいただけるはずです。

転職市場は基本的に「下りエスカレーター」です。大企業から中小企業へ人が流れることは日常茶飯事ですが、中小企業から大企業の中枢・管理職へのステップアップは、現実の雇用ではほぼ塞がれています。

もちろん、大企業が中小企業から中途採用を行うことはあります。しかし、その募集枠は本社の幹部候補などではありません。

  • 法人営業の最前線部隊: エリートプロパーが嫌がる、新規開拓の飛び込みやドブ板営業
  • ITの下流実装・保守運用: 深夜対応やレガシーシステムの改修、トラブル処理の工数要員
  • 建設・不動産の現場施工管理: 激務で離職率が高い工事現場の専任監督
  • 流通・外食チェーンの店舗運営: アルバイトの欠勤穴埋めや年中無休のシフト統括

これらはすべて「自社のプロパー社員がやりたがらない、過酷な現場の実務を埋めるための職種限定採用」です。最初から出世ラインとは切り離されており、年収も500万〜700万円前後で頭打ちになります。

大企業が求めるのは「自前で育成する手間を省き、現場の泥臭いタスクを今すぐ埋めてくれるパーツ」であり、中小企業の現場経験者がそのまま大企業で順調に昇進する都合のいい道はありません。

これからの子どもたちに必要な進路選択とは

「大学さえ出れば、エアコンの効いたオフィスで一生安泰」という時代は日本でも終わるのではないでしょうか。アメリカで起こったことは日本でも少しタイムラグを置いて起こります。

中途半端な気持ちで大学を出て、AIでもできる定型デスクワークを目指せば、低賃金と雇用の不安定さに直面します。かといって、現場の泥臭い専門技能を身につけてきた本物の職人たちの市場価値に勝てるわけでもありません。

これから求められる道は、大きく分けて2つしかありません。

  1. AIを使いこなし、データを疑い、複雑な文脈を統合して意思決定ができる「本物の思考力」を徹底的に磨き、トップ層へ突き抜けること。
  2. あるいは、机上の空論ではなく、「物理的な現場」で実際にモノを動かし、人を動かせる固有の専門技術・現場感覚を身につけること。

当塾が日頃の指導において、単なる暗記や目先のテスト対策にとどまらず、「なぜそうなるのか」「自分の言葉で説明し、論理的に判断する力」に徹底してこだわる理由はここにあります。

中途半端な知識の詰め込みは、これからの社会では何の防波堤にもなりません。お子さんが10年後、20年後に社会へ出たとき、どのような価値を武器にして生きていくのか。ぜひ一度、ご家庭でも現実の社会の変化を見据えた対話をしてみてください。

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芦屋で500人以上、個別指導20年のベテラン講師が、毎日・全教科、中学生と高校生を指導します。御影高校・神戸高校、関西学院・同志社・神戸大学・大阪大学を目指す特進個別塾です。