上級国民と機会平等／学習塾はそれにおもねる
機会平等主義がもたらす不平等
我々の社会でとても重視されることは機会の平等です。教育も就職も機会の平等が求められる。それ故、教育は高校まで無償化され、就職でも出身地などを詮索するのはタブーとされています。
そして、この機会の平等が確保されれば、後は本人の努力次第なのだから結果は本人の責任であるというのが、今の社会の建前になっています。ここで、オイオイ・・それは違うくね？ と言える雰囲気が今の社会にはありません。塾の目線で言うと、同じ学校で同じ授業を受けて、同じだけ勉強していても、成績など天と地ほど違うということが覆い隠されています。
だから、その延長線上にある就職や収入格差も、本人の責任だということになっています。けれど、これは平等主義という見地からは著しくおかしな話です。だって、能力は平等ではないからです。同じだけ努力しても恵まれた資質・能力の人間だけが好待遇を得るのであれば、全く平等ではない。
機会平等主義の結末
個人的なお話の出世や給与面だけでなく、上級国民や大企業という恵まれた人々は、この平等主義を社会制度に上手く使っています。恵まれた能力の人間が集まる大企業の法人税を下げ、能力故か運故か儲けた高額所得者の所得税の最高税率を下げ、「みんな平等に負担する」消費税にその減税分を転嫁してきた税制などその典型かもしれません。
機会平等なのだから、後は本人の努力次第、努力して儲けたものから金を取るなという理屈が当たり前のものになっているんです。でもこれは、資本主義下で社会の安定を図るために社会権や社会福祉を拡充し、資質や能力の不平等を補完してきた近代型の社会主義に反しています。あるいはキリスト教的な考えなら、寄付しないといけない。
この機会平等の差別の行き過ぎを押さえるために、日本は企業などが互助の一端を長らく保管してきた。年功序列という考え方です。そのため、安定した社会生活を多くの人間が送れていた。そういう共同体が日本では崩れている。
学習塾は機会平等に食いついた悪徳です／親はそれを見破らなければいけない
勉強する機会さえ与えればウチの子もという、機会平等主義にプラスして親心を利用しているのが学習塾です。スポーツや音楽などでは、いくら機会を平等に与えても能力差は如何ともしがたいと認めている親が、勉強だけはそれを認めない。目を瞑って自己暗示をかけないといけないほど重要事だからです。
でも、子供の学力をどれだけ伸ばせるかなど、学習塾側は預かった瞬間に理解している。それ以後の「○○大学に・・・」という言葉は、親の愛情と機会平等主義を利用し、目を瞑った親心を弄ぶ宣伝文句でしかない、
だから、親御さんは、しっかりと目を開けて、塾のどの言葉が本当で、何が嘘なのか見破らねばなりません。
ところが、教育業界はその一歩先を行く／偏差値と税制
ところが、親の判断を鈍らせるために、教育業界は偏差値をいじり出した。文系と理系で偏差値が違う、私立大学と国立大学で偏差値が違う。模試では、そんな奇妙奇天烈な状況が当たり前になってきて、偏差値だけで見ると関学が神戸大学と同じになったりしている。
わざと親も子供もまともに判断できなくしているとしか思えないんです。これは、複雑怪奇になって誰も理解できず、損をしているのか得をしているのかも分からない税制と同じです。
その陰で、資質と能力があるものだけが、こっそりとおいしいところをかっさらって行ってツケをみんなに回している。派遣社員で待遇を押さえ彼らからも消費税はたんまりと取って。人件費抑制で儲けた企業の法人税は下げている。企業は再投資して事業拡大などせずに、その利益を株主に還元している。株主の税率は驚くほど低い。
でも、一番愚かなのは、その株式市場の過半数以上が外国人に支配されていて、日本人の給料を下げて、外国人に金を流していることなんですけれども・・。
だから、税理士を頼るように塾を頼らねば仕方なくなっている
本来なら税金など、素人がパソコンに打ち込めばわかる程度の簡潔なもので、その仕組みや平等性など誰にでもわかるものでなければいけない。偏差値も同じです。上から下まで大学名を見た時に、誰も「そらそうやな」と思えるものでなければいけない。
しかし、その複雑なシステムを理解するのに専門家の手を借りざるを得なくなっている。複雑になりすぎた税制のため、税理士を利用するのと同じです。
簡潔な昭和の時代の大学入試が一番よかったと私は思いますけれどもね・・・・滑り止めの私立大学が入学金を分捕るところ以外は。だって、昭和は総中流の結果平等主義でしたからね。機会均等主義の入試を明瞭にしてみんなが理解できても、「学歴主義」と誰も文句は言わなかった。みんなそれぞれに生きていける中流の道があったからです。
