難解な英語長文?/難解な解答?/ただ単にダメな問題だと思います

お題です

代名詞の読解を取り上げた文章です。訳すのは簡単ですが、教えるのに困った問題です。受験生では知らないものがないくらい有名なハニャララ精講と呼ばれる問題集にある京〇教〇大の入試問題です。

最近、こういう入試問題が増えてきて、まともに勉強した生徒程できなくなって困っているんです。教える立場からしても、どうとでも解釈出来て教えきれないんです。そのどうとでも解釈できる文章で正解を求めて、人生の一大事である入試で落とすってどういうことなんでしょう?

…you may say this business of marking books is going to slow up your reading. It probably will. That’s one of the reason for doing it.・・・・・・

尚、前文は問題集に載っていません。後半この部分の訳には影響ないので省略します。

問題:下線部のthatは何ですか?

さあ、訳して見ましょう。

解答

that=本に印をつけたりすれば読書の速度が遅くなること

訳:このように本に印をつけたりすれば読書の速度が遅くなるだろうと言われるかもしれない。多分その通りだろう。本に印をつける理由のひとつもそこにある。

私の疑問

この解答では、何が何だかまるっきり分かりません。

・第2文のit は何か?

・第3分のthatとitの判断は?

問題集の解説がよく分からないんですが・・・

it は主に単数名詞を指しますが、節などを指す場合もあります。第2文の場合は、It=this business of marking books が主語で、willと続き、同じ動詞slow upが省略されていると考えるのが、おそらく順当でしょう。だから「多分その通りだろう」という訳になります。これは納得できますね!

問題は第2文です。thatは前文中の内容を受けるときと、前者、後者で名詞を受けるときもありますが、この場合はどうでしょう? 後者と言うとbusiness of marking booksを指すのでしょうか?するとitは何を指すんでしょう?

この問題集の解答と解説には、that=本に印をつけたりすれば読書の速度が遅くなること、と書いてあります。前文中の内容のことです。でもその判断根拠は書いてありません。では、itは何なんでしょう? 

it は多くの場合、同じ文中の単数名詞を受けます。とすれば、it=thatで、「本に印をつけたりすれば読書の速度が遅くなるは、本に印をつけたりすれば読書の速度が遅くなる理由の一つだ。」という訳の分からない分になります。

では、itが前文中の名詞や内容を指す場合、 It probably will. のitと同じになるはずです。itごとに内容が違えば、読者は分からないからです。それでは、it=this business of marking booksになり、「本に印をつけたりすれば読書の速度が遅くなることは、本に印をつける理由のひとつだ」という「本に印をつけるためにゆっくり読む。」という意味不明の文章になります。

では、このitは前文のitとは異なり、thatの一部を都合よく取って「ゆっくり読むこと」だと解釈するのでしょうか?それなら「本に印をつけたりすれば読書の速度が遅くなることは、ゆっくり読む理由のひとつだ。」=「マークしてゆっくり読むことで、ゆっくり読める。」とまだ意味が通ります。

クズな解答

でも解答は「that=マークをしてゆっくり読むこと」と書いておいて、訳では「本に印をつける理由のひとつもそこにある」とthatもitの意味もはぐらかして書いてあるんです。文法的な解答と訳に整合性が取れなくなるからです。

もしこの問題集の解答が正解だとしたら、こんなもの出題した大学の教員は、「じゃあ、解説して見ろ。」と言われたら、解説できるんですかね? 

私の塾の解説

大人がこの文章を読むとどうなるのか? 単に「that=そういうことは、it=そうするための理由の一つである。」といい加減に読みます。前文の通りThat=business of marking booksは slow up your readingすることです。

こうすると「マークすることは、ゆっくり読むための手段のひとつである。」と一番意味が通りやすいですから。ということで、普通の読者はthat=前者と訳すと思うんですが・・。でも、それじゃあ文法的には間違いだとこの権威ある問題集は言いたいんです。根拠は書いてません。

でもね、正解の通りthatやitの文法を考えれば考えるほど、訳の整合性がなくなります。英語力がある高校生ほど混乱するでしょう。おそらく、この文章を書いた人も、適当に代名詞を置いて、「そのことはそれが理由なんだよ。」程度にしか考えて書いてない軽い文章だから、読む方も適当に読み流してそういう訳になるだけのものに、なぜか問題集では訳の分からない理屈をこじつけようとしているんです。

だから、thatの自分たちの答えを正解にしては訳ができないから、適当な和訳で誤魔化すというバカげたことをしているわけです。大学側も、この問題集の通りの正解で受験生を落としたとするなら、私は納得できませんねどねぇ・・。

教えるとなると苦労するんです

ひとつひとつ文法を押さえて読めと言っている立場からすると、「それは、いわゆるそれのためなんっすよ。」と言う程度のことで、「書き手はそこまでキチンと考えて書いてねえよ。」なんか言えないじゃないですか~。「こんな入試問題出す大学はクズ。有名参考書もキチンと解説できていない。」なんて言えない。権威は向こうの方が上ですから。

・・・勘弁してほしいですよ、こんな問題集の解答。でも、この問題集、改定されてからこのような解答が増えています。教えにくいです。

今日の結論

大学の入試問題には、このような適当な文章を選んでいる大学も多いです。文法的に詰めれば訳が分からなくなる。どうとでも読める「それはそういうことだよ。」程度の解釈しかできない文章に、下線部を引いて問題にすることは結構あります。出題者の「オレ様の考えだけが正解」が炸裂するのだと思います。

私は、他の生徒を教えながら、唐突に質問されるこんな問題を5分少しでこの結論に導かないといけないわけです・・・涙

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芦屋で500人以上、個別指導20年のベテラン講師が、毎日・全教科、中学生と高校生を指導します。御影高校・神戸高校、関西学院・同志社・神戸大学・大阪大学を目指す特進個別塾です。