学習と早熟・年齢の関係/ダメ生徒から学ぶ中学受験
公立中学でよくあるパターン
中学1年や2年の方程式や連立方程式の文章がほとんど解けない生徒がいます。ところが、この方程式を放ったらかしにしておいて、3年生になっても出来ない。それで、とうとう3年生の冬休みになって、私立の過去問なんかをやっても合格点が取れないってことになります。
ここで初めて焦り出す生徒って、公立中学では半分くらいいるわけです。「中学3年の冬休みまで本気を出さない子供たちの将来」に書いた通りです。
ところが、何も学習せずに分からないままのはずだった方程式関係の問題を、入試前に少し教えると結構スラスラ解き出すんです。なぜでしょう?勉強はしてこなかったんですよ。
お母さん的には塾に行っているし、家でも塾の宿題をして頑張っているように見えても、それは親が煩いからやっているふりをしているだけで頭の中はスッカラカンな学習をして酷い点数を取り続けていたんです。「サボることから面従腹背へ/最近の成績が悪い中学生」
でも、入試が実際に目の前にぶら下がってくるとできるようになるんです。不思議ですねぇ?
今までできなかったことができるようになる理由:本気
私が生徒を見てきてその理由は2つあります。
まず最初の理由は、「初めて本気になった。」ことです。それまではイヤイヤやらされてスッカラカンな勉強をして何一つ身に付かなかった子供が、危機を目の前にぶら下げられて初めて「このままじゃ、オレの人生ヤバい。」って状態に置かれて、やっと自分から頑張り出したんです。
こういう子供の特性をよく知っていたのが戸塚ヨットスクールというところです。ここはにっちもさっちも行かないダラケた生徒を預かり、ヨットに乗せて誰も助けてくれない海の沖に連れ出して、海に落として小突き回すんです。ここで初めて「死」の恐怖を体感した子供は「ダラケたままでここにいたら殺される」と必死になるというわけです。「真剣な学習ができない子供たち/大人の通過儀礼が必要なのか?」の通りです。
いくら言って聞かせても分からない子供が、入試が目の前にぶら下がって「このままじゃヤバい」と感じて初めて本気で勉強する理屈とまるっきり同じです。
もちろん、生命にかかわる戸塚ヨットスクールの方法は肯定はできませんが、大人になるための関門としての苦労を浴びないと自分から歩みださない子供の数って増えてきていると思います。
今までできなかったことができるようになる理由:年齢
学年が上がると、昔学習した内容が妙に簡単に思えてしまいます。学校の勉強もしていない大人が、中学生の教科書ぐらいなら簡単に読めてしまいます。要するに年齢が上がり、成熟して理解力が上がると、下の学年の学習や子供の勉強などは努力しないでもデキるようになっているんです。
中学2年生で出来なくて、中学3年生の冬にできるというのは、頑張ったからでも賢くなったからでもなく、動物として発育したという全く生理的なものでもあるわけです。でも、これじゃ個人のアドバンテージにはなりません。生徒全員がそうなるんですから。
だから、入試前に頑張って合格点を取れるようになっても、学年順位も偏差値も上がらずに、志望校も上がりません。ダメダメで「合格点取られへん~」って冬休みに泣いている生徒全員が、2月半ばには合格点を取れるようになるからです。みんな図体も脳ミソも成長してるんですから。
私の体験
私が小学校に入って、1年生の2学期?に初めて5段階評価が通知簿に付いた時は、オール2でクラスでほぼ最下位でした。ところが、小学校4年生では5が増えて行きクラスでトップクラスになっていました。
昔のことですから、私が特別に塾に行ったわけでもありません。その間私がやっていたことは習字とそろばんくらいです。大人になってこの理由が分かったのですが、私は12月30日生まれで結構早生まれのほうなのです。よく考えると体も小さかったんです。それが4年生になるとクラスで真ん中より後ろの身長になった。
だから、学年が上がるごとに遅生まれの子供に成長が追い付いていった。それにつれて成績も上がって行ったという生理的なものです。
むやみに中学受験に突進するのは愚かです。
だから、子供の学力というのは、子供が本来持つ能力だけでなく、成長という要因に大きく左右されます。それは生育にバラツキのある学年が下のほうほど大きく左右される。「子作りは欲求にまかせて、子供には欲求を我慢しろという中学受験/早生まれを無視する親たちの中学受験」の通りです。
もし子供が早生まれなら、あるいは子供っぽくて成長が他の子供より遅いと感じるなら、中学受験で悲観する必要はありません。成長が追い付く高校で必ず子供は本来の能力に到達します。下位の私立でも公立でも努力して上位にいれば、そこそこの進学私立などと張り合える学力にはなります。「進学校の生徒が普通の高校の生徒に追いつかれる理由」の通りです。
肝心な大学受験で精一杯頑張れる環境を作るのが大切/私立受験で名門校がその環境とは限らない
成長がほぼ揃った高校では、勝負は元来の能力と本人の頑張りになります。
だから、素晴らしい大学進学実績を残す進学校では「素晴らしい授業がある」と誤解を生んで、中学受験で無理やり上位校に下位で進むと、発育の早い上位の生徒だけを対象にしたカリキュラムで落ちこぼれて悲惨なことになります。高校で十分頑張れないことになり、成長に合わせた授業をゆっくりしてくれる公立で余裕を持って学習していた大学時行けなくなるんです。そんな私立の生徒はいっぱい見てきました。「進学塾や進学校の生徒が抱える学習問題・・根っこは親です」「スイミングスクールと学習塾や進学校は同じビジネス手法です」
逆に、能力面からは、高度化した学習面では文系と理系のように、越えがたい得意・不得意が出てきます。だから、理系流りだといって数学が不得意な生徒が理系に進むと悲惨なことにしかなりません。いつまでも数学のある国立大学志望だと言っていれば、英語の学習が不十分になって、何ランクも下の大学に進むことになります。「文転(文系へ転向)する生徒の末路」「文転というキーワード検索が多い理由/数学の恐ろしさを知らない文系の親」こういうバカな例もいっぱい見てきました。
結論:子供の成育と資質を考えなない親は、子供を潰す
子供の成育を考えない中学受験、子供の能力を考えない、親の見栄だけの進路選択は子供を見事に潰します。