勘違いが生む退塾/正直呆れています
どうにもしてあげられない生徒の不満
塾を再開して少し経った頃高校2年生の私立の生徒が来ました。多少の進学校で進学コースが複数あるその下の普通科の生徒ですから、中堅高校の生徒と同等と言っていいでしょう。そこで成績は真ん中から少し下くらい。要するに、関学などかすりもしない学力しかない。
それで私はカリキュラムと学習内容を組み、今までの数学と英文法の復習をすべてやらせ、その後は予習中心に教え始め、普通科でその生徒はほとんどトップ、1番か2番の学年順位を取るようになりました。それが2学期から3年の1学期の定期テストまで続いていました。私としては、特別なと言っていいくらいの成功例です。
ところが、眼を見張る成績の上昇に満足していた生徒や親御さんが、定期テストでトップを走っているにも関わらず3年生になった頃から不満を持つようになってきたのです。「定期テストには感謝しているが、模試の成績はそこまで上がっていない。」と言うものです。定期テストはレベルがそれほど高くない普通科の順位ですが、模試では学校での順位や全国順位が出るから、成績は簡単に上がらないんです。
私の塾に来るまでは希望だったという大学の偏差値には到達してはいたんですが、そんなことは忘れてツーランク上の大学に届かないと不満だと言い出した・・・イヤイヤ、今の成績でも奇跡みたいなもんなのに。
正直、困りましたね
私は、その生徒と親御さんに「学習範囲が決まっていて基本問題も多い中堅高校の学校のテストには即効性はあったかもしれないが、応用問題が中心の模試には相応の入試問題などの学習を続けて理解力を育成しないと対応できないので時間がかかるし、難しい。」と説明していました。
まあ、正直に本心を明確に言わなかった私にも非があるんでしょう。正直に言うと、正しい学習内容とスケジュリングで学校のテストは対応できるでしょうが、応用力が必要な模試に対応するには粘り強い学習の継続と応用問題へのアプローチ、それに何より生徒の資質が必要です。誰でも彼でも勉強すれば偏差値が60を超えて関学に行けるわけではない。特に中学受験で相応の学習適性しかない生徒では、資質の面で問題がある。
その一方で「関大も行けるかもしれへんやん、頑張れ!」と言ってきたのが、私の間違いだったんです。
恐らくこの親子にそれで誤解を振り撒いたんです。だから、学校の成績が飛躍的に伸びて資質は十分と勘違いした。そして本来の資質いっぱいに成績を伸ばしてあげた塾に「お前のとこの教え方が悪い。もっとできる子のはずや!」と言ってきたんです。
でもね、私の塾より多額の金を払い長期間通っていたであろう中学受験の塾は、短期間で成績を最上位に引き上げた私の塾に比べて何をしてくれたんだ?
私のミスもありますが、これだけの実績を作っても、こんなことを言われて、こうも簡単に辞められることに私は正直言って嫌気が差しました。
資質を判断できない自惚れと愚かさ
「基本学習は小さな町の塾でいいが、入試は予備校で特別な授業を受けたら・・・」とでも思ったんでしょう。でも、私はその生徒に数学では数研の入試問題集を、英語では英文問題精講とネクストステージを購入させて熱心に指導していたんですよ。けれど、入試問題では題意の把握も、解法の理解もまだまだできない。
でもね、それを乗り越えて行かないといけないんです。この生徒の資質では、それは難しいんですよ。中堅高校の生徒を予備校に放り込んで、「パッと入試問題が解ける魔法の解法!」なんて特別な授業があると思いますか?
大手の中学受験塾で受験して中堅校に通ってるんだから、そんな魔法はないことは良く分かっているでしょうに。予備校に行ったところで同じような問題を解かされて、恐らく私より不親切な集団授業を受けて終わりです。
学習にも適性も資質もあります。本人の能力を超えての指導は不可能です。甲南大学に進める生徒に正しい指導と相応の努力をさせて甲南大学に進ませてあげることは塾には出来ますが、関学に行かせてあげることは難しい。関学に進める資質の生徒を、真っ当に磨き上げて関学にはいかせてあげられるけれども、神戸大学だと不可能です。
この限界を知って、その生徒に合った判断をすることが親の判断であり役目だと思うんですが、それを私が勘違いさせたんでしょう。でも、親子揃って「その上、まだ上」って文句を言って来るなど愚かにもほどがある!
これだけの結果が出たのをありがたいと思ってもらえずに不満を持たれるなど、心外以外の何物でもない!!
この生徒がすべきだった正しい判断
3年生になって、塾で1年間まともな指導を受けて模試の成績を上げられないのなら、今から半年程度どこであがいてもムリですよ。甲南や関学に腐るほど放り込んできたベテランの私が個別指導してるんですから、どこに行ったってそれ以上の魔法はない。
定期テストがこれだけ伸びて、私も「上を目指して頑張ろう!」なんて言ったもんだから、「オレは天才だ。模試も伸びて夢の大学!」と親子で思っちゃったんでしょうねぇ・・・。
現実を見つめる目がない生徒、自分の限界を知らない生徒は、学習方法を誤り進路を誤り、必ず失敗します。これだけのことを塾でしてもらって、励ましを自惚れに受け取って、不満を持って辞めて行くなど呆れるしかないです。