通知表3と4はオール4以上に上げることが難しい 指導方法は?

評価「4」の壁に潜む本質的課題

前編「公立中学の通知表オール3を4に引き上げるのは難しい」では、阪神間における上位層の私立流出に伴う公立中学の構造変化、新学習指導要領における「観点別評価」の仕組み、ならびに「通知表オール3」の生徒が脳の情報処理能力の限界から暗記作業を完遂できず、評価「4」への引き上げが困難である理由を解説いたしました。

本稿では、保護者様から最もご相談を受ける機会の多い「通知表で3と4が混ざっている生徒」の評価構造について解説いたします。

ご家庭からは「真面目に通塾し学習に取り組んでいるため、あと一歩でオール4、あるいは5が混ざる水準に到達できるのではないか」というご期待をいただくことが多くあります。

しかし、指導現場における観察事実および認知心理学・脳神経科学の知見から導き出される結論からは難しいのではないかと思われます。 「3と4が混ざる生徒」が「オール4」へ到達できない理由は、学習量の不足ではなく、「問題集では解けるはずの基本問題を、テスト本番で失点してしまう」という脳の情報処理特性の限界に起因しています。

(参考文献) Sweller, J. (1988). Cognitive Load During Problem Solving: Effects on Learning. Cognitive Science, 12(2), 257-255.

「問題集の配置」による解法理解と「ランダム出題」における課題

指導現場において、通知表で3と4が混ざる生徒には特徴的な学習傾向が見られます。

それは、「問題集において同一系統の問題が順序立てて並んでいる状態では正解できるものの、定期テストのように問題がランダムに出題された途端、適用すべき解法を識別できず得点が大幅に低下する」という現象です。

(参考文献) Bjork, R. A. (1994). Memory and metamemory considerations in the training of human resources. In J. Metcalfe & A. Shimamura (Eds.), Metacognition: Knowing about knowing (pp. 185-205). MIT Press.

問題集の同一単元内においては、「どの解法を使うべきか」という事前のヒントとして機能します。例えば現在進行形の単元では「とにかくingをつけて答えればよい」というようなことです。生徒は解法の根本的な構造を理解していなくとも、ページの並び順という外部の情報を足場にして暫定的に問題を解くことが可能です。

しかし、問題が混ざり合って出題されるテスト本番では、この外部のヒントが存在しません。例えば「He put the box on the table.を進行形に直せ」という問題が出れば「He is puttingthe box on the table」と、このレベルの生徒は答えます。Heという三人称単数の主語に対してputにsがついていないことで、問題意図は過去進行形であるということが理解できないためです。このputの問題は過去形や三人称単数の単元では必ず問題集に乗っている定型問題です。しかし、進行形という別単単元に話を振られると、自力で脳内から該当する解法を検索して引き出すことができず、「過去形」「進行形」という単元別では解けていたはずの基本問題においても正答に至らない事態が発生します。

認知心理学において、これは「文脈依存的記憶」と呼ばれる状態であり、知識が個人の脳内に独立して定着(長期記憶化)していないことを示す典型的な状態です。

(参考文献) Godden, D. R., & Baddeley, A. D. (1975). Context-dependent memory in two natural environments: On land and underwater. British Journal of Psychology, 66(3), 325-331. Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-Enhanced Learning: Taking Memory Tests Improves Long-Term Retention. Psychological Science, 17(3), 249-255.

解法の「構造識別能力」における生体的な個人差

では、上のputのように出題形式が変化しても即座に解法を識別できる生徒と、どれほど練習を重ねても識別が困難な生徒の違いはどこに由来するのでしょうか。この差は、単なる反復回数や初期教育の有無ではなく、生まれ持った脳の配線構造および情報処理能力(地頭)の違いに起因します。

(参考文献) Deary, I. J., Penke, L., & Johnson, W. (2010). The neuroscience of human intelligence differences. Nature Reviews Neuroscience, 11(3), 201-211.

この情報処理能力の差は、幼少期における物事への反応や構造の捉え方においても観察されます。

例えば、複雑なルールで構成されたコンピューターゲームに接した際、高い処理能力を持つ子どもは、画面上の現象から「敵の動作パターン」や「システム上の構造ルール」を意識せずとも抽出し、全体の構造を把握して適応していきます。

一方で、この能力が未発達な子どもは、画面上で起きる一つひとつの出来事や表面的な変化に追われるのみとなり、全体を貫くパターンや構造として捉えることができません。

(参考文献) Gottfredson, L. S. (1997). Why g matters: The complexity of everyday life. Intelligence, 24(1), 79-132.

定期テストにおいて発生している問題もこれと同質です。 問題集の並び順に従って解くだけの学習は、構造の理解ではなく表面的な手順のなぞりに過ぎません。問題がシャッフルされた際、前者の能力を持つ生徒は問題の構造を捉えて正しい解法を選択できますが、後者の能力を持つ生徒は「全く未習の課題が出現した」と認識し、処理が停止してしまいます。

(参考文献) Chi, M. T., Feltovich, P. J., & Glaser, R. (1981). Categorization and representation of physics problems by experts and novices. Cognitive Science, 5(2), 121-152.

だから、ミドリゼミでは小学校時代にコンピューターゲームを子供にさせることを提唱しています。小学校時代にゲームを他のせいめない子供は、中学以後学力が伸びないケースが多いことを経験として知っているからです「私が親なら行う子育て/簡単で間違いがない/ゲーム・そろばん・公文・中学受験を利用」。

解き直し演習による補修の限界

保護者様の間には「解き直しや反復演習を何十回と繰り返せば、いずれ解法を見分けられるようになる」という捉え方が存在します。しかし、脳科学的な観点から見れば、このアプローチには明確な限界が存在します。

問題の構造を一瞬で見抜き、必要な解法を検索・抽出する能力は、脳の前頭葉および頂頭葉を結ぶ神経ネットワークの密度や処理容量に依存しており、生まれ持った個体差が非常に大きいことが科学的に判明しています。

(参考文献) Jung, R. E., & Haier, R. J. (2007). The Parieto-Frontal Integration Theory (P-FIT) of intelligence: Converging neuroimaging evidence. Behavioral and Brain Sciences, 30(2), 135-154. Plomin, R., & Deary, I. J. (2015). Genetics and intelligence differences: five special findings. Molecular Psychiatry, 20(1), 98-108.

高処理能力を持つ生徒は1〜2回の演習で問題の構造を把握し解法を体系化できますが、そうでない生徒に対して演習の反復を強制したとしても、彼らの脳内では「提示された数値や解答手順の丸暗記」が繰り返されるのみです。

脳内で情報を行動パターンとして構造化する処理自体が発生していないため、どれほど解き直しを重ねたとしても、初見やランダムな出題に対応できる神経回路が構築されることはありません。

(参考文献) Kahneman, D. (2011). Thinking, Fast and Slow. Farrar, Straus and Giroux. Fields, R. D. (2008). White Matter Matters. Scientific American, 298(3), 54-61.

この生徒たちをどう教えればいいのか?

前編および後編を通じて示しました通り、現代の公立中学における各評価帯は、単なる勉強時間の多寡によって地続きになっているのではなく、脳の情報処理能力における明確な層の分断によって形成されています。

通知表がオール3の層は、一時的な情報処理容量の限界から書き取り作業すら困難であり、教材を視覚的に追うのみの不完全な記憶に終始するため評価3の維持が上限となります。

通知表で3と4が混ざる層は、問題の構造を見抜く処理能力が不足しており、問題集の配置順などの構造に依存した学習しかできないため、テストで問題が乱雑に出題されると基本問題で失点しオール4に届きません。

ミドリゼミはこの生徒たちをどう教えればいいのか、常に悩みながら指導しています。ただ問題を解かせるだけではなく、上のputの例のように「問題を構造的に把握するということはどういうことか?」を説明し、間違いがあればどういう構造的な志向で間違えたのか生徒と考えて生徒の気づかせようとします。もちろん、上手くいかないことも多いですが、なとかできないかと日々奮闘しています。

(参考文献) 苅谷剛彦(2001)『階層化日本と教育危機』有信堂高文社 耳塚寛(2007)『階層化社会と教育格差』東京大学出版会

「塾へ通わせて反復練習を行えば、自然と評価が3から4へ、4から5へ引き上がる」という前提は、評価制度の仕組みおよび人間の脳の認知構造の双方から見て妥当性を欠く考え方と言わざるを得ません。

当塾では、最難関校指導において不可欠な「高度な情報処理能力と論理的思考力」の錬成に特化しており、事実と科学的根拠に基づいた客観的な視点のもと、真に指導が成立する能力と意欲を有したご家庭とともに、質の高い教育活動を推進してまいります。

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芦屋で500人以上、個別指導20年のベテラン講師が、毎日・全教科、中学生と高校生を指導します。御影高校・神戸高校、関西学院・同志社・神戸大学・大阪大学を目指す特進個別塾です。