学校間で起こる逆転は学校内ではおこらない/無理に上位校に行ってはいけない理由
これは以前にも書いた内容です。「ジャック・ウエルチに学ぶ 高校進学に伴う成績逆転の謎」
学校間で起こる逆転劇
受験など極めて単純なお話です。神戸高校に進めない生徒が御影高校に進みます。入学時の成績は完全な上下関係にあります。でも、卒業時は神戸高校の下位2割の生徒では甲南大学も怪しいですが、御影高校のトップクラスの生徒は阪大でも神戸大でも進みますし、上位2割にいれば関学や同志社に進みます。これと同じ現象は高校受験だけではなく中学受験でもおこります。
でも、長いこと塾を経営していますが、この学校間の逆転劇の理由を私は聞いたことがありません。センター入試の受験者は50万人以上いますから、毎年十万人以上でこの逆転が起こっています。最終学歴を決める重要な現象が毎年これほど大規模に起こっているのにです。
そして、世の中のお母さん方は、この現象を考えずに「なるべく上の学校」を受験させて、下位の成績で子供を中学や高校に放り込んで失敗される。
逆転現象の理由1:上位校の無里な授業
この大規模な逆転現象について、私が考える理由は大きくは2つです。まず授業の問題です。多くの学校では上半数の生徒に合わせた授業をして進学実績を伸ばそうとする結果、下半分の生徒が落ちこぼれる。「スイミングスクールと学習塾や進学校は同じビジネス手法です」の通りです。学校にとっては、上位の生徒が有名校に合格して宣伝になって、次の世代の生徒募集に役立てば、真ん中より下の生徒の進学なんてどうでもいいんです。負け組の実態に目を向ける進学希望者はいないからです。
さらに、最上位の学校では上位の生徒は何を教えても自分で学力を伸ばすので、適当な授業が許される。デキない生徒を怒り、なだめ、苦労して少し成績を上げるより、デキる生徒に「やっとけよ」と学習を丸投げをする方がよほど楽で効率的です。勝手に勉強して、勝手に学力を上げて、勝手に有名校に進学して、実績は学校のものになります。
進学校や進学塾で「素晴らしい授業がある。」と思っている方は、あまりにも愚かです。進学校や進学塾の成功の秘密は、「デキる生徒を採れる」という看板があること以外はありません。だから、下位の成績で有名校なんかに進んだら、適当なことをやられて、責任は全部生徒に押し付けられて、終わりです。
逆転現象の理由2:「働きアリの理論」
以上の点は今まで散々書いてきました。最後は、今回お話することです。簡単な理由で、中学時代に必死に勉強して神戸高校に進んだ生徒の全員が、高校ではまめに勉強するわけではないということです。そこまで頑張らないで御影高校に進んだ生徒の全員が、高校でも適当に勉強するのかと言えば、そうでもないということです。
これは「働きアリの理論」と呼ばれるもので、ジャック・ウェルチという名経営者がGEというアメリカの大企業で、この理論をもとに経営して成功して有名になりました。この理論によると、よく働くアリと、普通に働くアリと、サボっているアリの割合は2:6:2で、どんな巣穴でも同じになるという理論です。よく働くアリ2割を間引くと、残りの8割の中の2割がよく働くアリになり、全体としてはまた2:6:2になります。よく働くアリだけを集めても、一部がサボりはじめ、やはり2:6:2になります。サボるアリだけを集めても、一部が働きだし、やはり2:6:2に分かれます。だから、ウェルチは毎年下位評価の社員をクビにし、新しい社員に入れ変えていったのです。もちろん、 2:6:2 似というのは、アリが巣穴を維持するための最適な割合です。すべてのアリが全力で働かないといけない構成だと、緊急時に対応出来ないからです。
でもね、巣穴を維持する必要のない人間様にもよくあてはまるんです。最初に書いたように、神戸高校に行けたかも知れないのに必死に頑張らなかった生徒が進む御影高校ではその上位2割が優秀な働きアリに変身し、今度はキリギリスになった神戸高校の下位2割の生徒を追い越す。「働きアリの理論」と成績逆転の数字まで辻褄が合っています。
別にサボりたいからサボってるんじゃない生徒も多いと思います。訳の分からない難しい授業をされて下位の生徒は嫌気が差すんだと思うんですよ。それで落ちこぼれて投げるってのも多いと思うんです。
学校内では逆転は起こりにくい
もう一つの大切な真実は、一旦学校に入ってしまえば学校の中では大規模な成績逆転はおこらないということです。中位の生徒が最上位に、下位の生徒が上位にというような劇的な成績逆転は多くはありません。そりゃあそうでしょう。上位の生徒しか相手にしていない授業をされるんですから。理解もできない授業を受けて、解答を丸写しするに近い宿題をして、学力も身に付かずに無駄な努力ばかり強いられるんですから。
こんな自明なことも考えずに受験する親が多い
こんな自明なことも分からずに、「なるべく上の学校」と見栄を張って、あるいは進学実績を上げたいだけの塾の口車に乗って、上位の学校に下位の成績で入学させる親が多いです。正直、バカだと思います。親と学校に潰されて悲惨な未来しかない子供を相手に20年塾を経営して、プライドも希望も失った子供に毎日個別指導で教えてきたオヤジは、本当にそう思うんです。「アホやな~」って。進学塾や進学校の生徒が抱える学習問題・・根っこは親です」「進学校の生徒が普通の高校の生徒に追いつかれる理由」に以前書いた通りです。