中間テストの結果から見る成績中位と上位の差/秋風が身に染みるぜ
中位の生徒と上位の生徒の解答の差
例えば社会の問題で、「県庁所在地A市は、この20年間で人口が60万人から80万人に増加した。65歳以上の人口比率は減少している。」「B市は、逆に10万人から8万人に減少した。65歳以上の人口比率は増加している。」というデータがあったとしましょう。では、これはどういうことですか?という問題が出た時、生徒はどうこたえるでしょうか?
成績の良くない生徒は「県庁所在地は人口が増え、B市は人口は減ってるが高齢者が増えている。」とそのままオウム返しのように答えるでしょう。だって、自分でその場で考えると、この情報からではそれだけのことしか分からないからです。
では、成績の良い生徒はどう答えるでしょう?「人口が多い都市部に人口が密集し、地方都市では過疎化と高齢化が進んでいる。」と答えるでしょう。だって、教科書には都市部で人口密集が、地方で過疎化と高齢化が進んでいると太字で書いてあるから、この問題を見た時に「ああ、あそこのことを書けという問題なわけね。」と題意を把握するからです。そして、教科書でも問題集でも太字で書いてあるキーワード=重要語句を織り込んで正解を作ります。
社会に限らず、全教科で同じことが起こります。成績が悪い生徒はいつもその場その場で考えるだけで、的外れなことを繰り返します。「ポイントを押さえて学習できていない」「題意を把握してテストを解けない」と言うことです。
中位の生徒と上位の生徒の壁
もちろん、これは学習の量と質より本人の資質に依存します。周囲からいくら教えられても身に付くものではありません。いくら「人口密集」「過疎」の現象を教えて、「ほら教科書や問題集のグラフでは・・」と説明しても、テストで別角度の資料から出題された時に「都会と田舎の人口増減の説明だから、グラフや資料の形は変わっても、人口密集と過疎の問題!」と認識できなければ、教えていないのと同じです。
でもね、この認識というのは、いくら教えても身に付かないんです。何度同じ様な失敗をテストでして、繰り返し説明しても身に付かないんです。いくら頑張らせても、おぼえさせても、この理解力の壁=本人の資質を乗り越えさせるのは、不可能に近い程難しい。本人の頭に「理解」を受け取れるだけの発育か能力がないからです。「成績の良い生徒と悪い生徒の日々の勉強/子は親の鏡」や「中学2年で高校の勉強を始める進学校の盲点/発育」に書いた通りです。
だから、同じ授業を、同じようにまじめに受けていても、テスト結果に天と地ほど差が出るこの壁は、誰が教えようと、いくら熱心に教えようと、教える側からでは乗り越えさせることはできません。
中位の生徒と上位の生徒の壁
ここに塾のジレンマとあります。いくらキチンと熱心に教えていても生徒がデキなければ教えていないのと同じです。そして、得点だけを見た親から「あの塾、アカンわ。」と言われる。だから、多くの塾ではこの壁の下の生徒は教えたくないわけです。この壁の上だけの生徒を集めれば、どれだけ楽か。教えたことを理解し、テストでは自分で考えて対処していってくれる。
そして、この壁の上にいる生徒の進学実績に目が眩んで、親は進学塾や進学校に入れるんですが、そこで仮に同じ授業を受けたとしても悲惨な結果しかでない。塾や進学校もそんなことは分かっていて、この壁の下の生徒を採る。壁の上の生徒だけでは、経営が成り立たないからです。
だから、経営上仕方なく採っているだけで、学力をどうにかしようなんて思わない。適当に教えて、責任逃れのために宿題は一杯出して、「私たちはキチンと教えてますよ。本人の努力不足です。」と逃げる。「スイミングスクールと学習塾や進学校は同じビジネス手法です」に書いた通りです。
でも、子供がこの壁の上か下か親は分かっていない
でも親は分かっていない。なぜか? 簡単です。それは中学受験が盛んになって、成績上位の生徒の多くが抜けた公立校の「普通」は、壁の下だと気づいていないからです。中学受験した側も、中学校が増え、特進クラスが増え、昔なら入れない壁の下の子供が、一応進学校に入れるようになっていることに気づかない。
公立校で普通、あるいは一応進学校の生徒の親は酷い成績を見ても、壁の上ではなくても、いくらなんでも壁のあたりにいると思っている。だから、叩けばなんとかなると期待して塾に来るんです。でも塾側は「壁の下の生徒にムリ言うな。金だけ払え。」と考えている。
このギャップが私の塾のような小規模な塾の経営で一番大変なところです。「授業料さえもらえればいい。できるだけ退塾までの時間を引き延ばして搾り取ろう・・・・」というように、大規模な塾みたいに切り捨てられないからです。いや、大手塾で切り捨てられた生徒が来るからです。
私の塾でも壁を乗り越えさせるのは負けそうです
でも、正直、やっとまともに歩けるようになった3歳の子供にロッククライミングをさせて壁を乗り越えさせようとしているんではないか?と思うことが良くあります。「これは、教えられる側にとっても、教える側にとっても不幸でしかないんじゃないか?」と、私も一生懸命教え、本人もそれなりに頑張った挙句の散々なテスト結果を見て思うときがあります。
いくら頑張っても、テストのその場で頭が回らなければ、どうしようもないんですから。
それに、塾の授業料というのは大手の進学塾という、教えるのが楽な塾ほど高いんです。これが塾のランクというものです。でも、逆じゃないかと、小さな塾の経営者としては思うんです。介護と同じで、一番大変な業務なのに世間からは見下されて、一番安い料金に甘んじないといけないこの仕事の大変さをテスト時期には身に染みて感じます。