私立大学の英語の難化傾向/文法力と社会知識の両輪が必要になってきた/学校・クラブ活動・塾を往復するだけの生徒は無理/子供の育て方そのものが問われている

最近の私立大学の英語長文の典型的な問題

これは、阪神間で有名な中堅大学の入試問題です。どうです? 読めますか?

私の感触では、この大学の志望者はほとんど読めないと思います。そのおかげで、今年度にこの大学の合格点は、ざっくり言うと、文系3教科300点満点で210点から180点に下がりました。

その210点当時の問題と比べて下さいよ。「ベネッセで偏差値60!、中堅大学の最近の入試問題など中学生でも解ける」少し難しくなったというレベルではないです。恐らく神戸大のガチの志望者でもやっとというレベルです。

読めない理由は?

文法や構文が難しくなったことが大きな原因ではありません。多くの高校生には英文で書かれている社会事象が難しすぎて、英語を和訳しても内容が把握できないことが理由です。だから、自分がしている和訳の内容が正しいのか間違えているのかが把握できずに、何を読んでいるのかも分からない五里霧中のまま読み進めなければならないんです。

例えば、初っ端からMoral Machineという訳の分からない単語が出てきて、それは何のことなのか説明がその後にしてありますが、この大学の志望者では予想外過ぎて和訳するだけでは、何のことか読み取れないのです。How self-driving cars prioritize lives of different variation・・・と説明されても、その後の「目の前にいろいろな人間がいて衝突が避けられない場合、緊急時にどの人間に進路を切って犠牲にするのか?」ということがモラルの意味だなど想像もつかないからです。

この文章を説明した後、「難破船で浮き輪が一つしかない時に、二人浮き輪につかまったら沈む。その時に相手を殴って沈めて自分が浮き輪につかまるのが罪になるかどうかって言う有名な話知らんか?」と私は生徒に聞いたのですが、知りませんでした。それじゃあ、こういう場面設定のお話で、何をmoralとして人間の価値観を調べようとしているのかを分からないのは当然です。

文章の内容自体が難しくて、和訳しても内容の把握ができずに、自分の和訳が正しいのかどうかも分からないと、グーグル翻訳のような整合性のない和訳を積み重ね、内容はおろか自分の和訳が正しいのか間違っているのかも認識できなくなります。そして、そういう傾向の問題が特に私立で増えてきています。その多くは、志望の生徒のレベルでは難しすぎて、入試の選定には役立たないものです。

「他の大学もこんな問題出しているし、ウチの大学だけ入試問題を受験生に合わせて簡単にしていたら、世間体悪くね?」って安易な判断を大学側がしたとしか思えない。だって、同レベルの大阪の中堅大学も似たような問題を出していて、去年改定された基礎英文精講に載っていたんですが、レベルが上の関学のガチの志望者が「内容が難し過ぎて、何が何だか分からない。」と言ってますから。

だから、受験生みんな読めなくって合格点が下がったんです。入試問題でボーダーレベルの受験生の学力に応じて得点差開かないので、入試が機能しないことになっています。本末転倒とはこのことですな。

英語の勉強だけしても読めないことが増えてきた

こういう入試の傾向に、有名な「基礎問題英文精講」という長文問題集は内容を大きく改定し、何十年も載せ続けた難解な文学的修飾の入試問題を減らして、英字新聞や雑誌のような新しい傾向の入試問題を多く乗せるようになっています・・・新しい問題では解説は以前以上に酷いですが、文章のセレクトは以前同様に素晴らしいです。

私も高校のときには、教科書などは読めても英字新聞は読めませんでした。それは教科書とは違う独特の文章と、教科書や参考書の使用方法とは違う英単語の使い方(上の例ではmoralという単語です。)が分からず、書いてある内容も高校生の社会的知識からはチンプンカンプンだったからです。「国語の長文読解ができない生徒/物語は読めるが説明文は読めない生徒の処方箋はない」にも書きましたが、最近はこの傾向がますます強くなってきています。

難解な文学的表現より、ニュースやビジネス文章などを読める実務的な能力の選定に大学側が重心を移してきたからでしょう。大学側の見栄だけの問題でもないんです。ただ、上の問題をこの大学の入試問題にするのは、やはりレベル的に間違いだと思います。

ということは塾だけでは対処できません/家庭力に問題は移ってきている

私は上のような文章では難破船の話も引っ張り出して内容の解説もします。学校や予備校のように和訳して終わりにはしません。どういう社会事象や社会常識の話を書いてあるのか生徒にかみ砕いて説明もします。けれども、科学分野から、政治・経済、文学、芸術、公共福祉、世界時事に至るまで塾で教えるのは無理です。

だから、子供がいかに世の中に興味を持って普段から情報収集しているかが重要になってきています。学校に行って、クラブ活動して、塾に行って、帰ってきて宿題をして寝るだけの世界しか見ていない生徒では、定期テストで良い成績を取れても入試には歯が立たなくなってきているんです。

もちろん、クラブ活動などの子供の世界で充足するような子供にいくら「世の中に興味を持て」と言っても無理なのは承知しています。でも、せめてご家庭で普段からニュースなどを見る時などに、いろいろな話を小学校からしていっていただかないと、塾に連れてきて「英語や国語の読解を教えて、成績を上げろ。」だけでは無理になってきているんです。問題は読解力にはなくなってきているからです。

だから「英語だけ勉強していても読めない。同じ傾向は国語の説明文にもある。自分で興味を持てないのなら、せめて食事時にニュースなんかを見て分からないことがあれば親に聞け。」と塾では、最近は以前以上にアドバイスします。問題は学校や塾の勉強だけではなく、ご家庭でどのように子供を育てているのかに移ってきているんです。

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芦屋で500人以上、個別指導20年のベテラン講師が、毎日・全教科、中学生と高校生を指導します。御影高校・神戸高校、関西学院・同志社・神戸大学・大阪大学を目指す特進個別塾です。