この5年間の生徒・親の変化/中流の崩壊は大人社会だけではない
生徒の変化
中位の成績の生徒の劣化、これに尽きます。まるで中流家庭が崩壊して下流家庭が激増している社会を敏感に反映しているかのようです。
激増した下位の生徒も、塾をサボる・反抗的という従来の下位の生徒とは違い、真面目に塾に通い、真面目に机の前に座り、毎日2時間も3時間も勉強して、漢字も重要語句もほとんどおぼえていない理解し難い生徒が激増しています。「理解の壁/公立中学の通知簿3と4間に立ち塞がる途方もない壁」の通りです。
公立中学や中堅高校を見た時、従順で言われた作業を黙々とこなすけれど、頭は全く働いておらず、まともな業務も出来ず、「何でこんな条件で働かなあかんねん!」と反抗することも知らない奴隷のような非正規労働者の養成場のように私には思えます。
子供は社会の鏡であると、本当につくづく思います。長いゆとり教育の末、文科省は、非正規労働で単純作業に従事することしかできない従順な奴隷を大量育成することに成功したと思う以外ないです。
親の変化
無茶を言う親御さんが激増したことです。上のような子供の現状を理解できずに中学校の途中まで育ててきて、入試が目の前にぶらつき出したら「これ、ヤバいんじゃね?」と漢字も重要語句もおぼえられない子供を塾に来て、成果を求めなさる。
昔はこういう生徒の親は、「ウチの子こんなですから、まあ程々に・・」と分かっていたんですが、漢字をおぼえられない子を塾に連れて来て「なんで成績が上がらないんですか!」とブチ切れる親御さんが増えてきています・・・中学生にもなって毎日机の前に2時間も3時間も座って漢字もおぼえられないんですから、もう手遅れですよ。
やはり小学校と中学校の成績や通知簿が誤解を生んでいる面が大きいと思うんです。中学の通知簿3で漢字も重要語句もおぼえられないなんて親は思っていないですから、「学習の方法を教えてもらえれば」「応用問題を塾で教えてもらえれば通知簿3が4になる」と思って塾に来るんです・・・・ムリですよ。
こうなった原因/学校編
小学校教育の崩壊です。半数以上が中学受験塾の学習をメインにしている小学校は、生徒の息抜きの場です。手を抜く・サボることがデフォルトになっている。学校側も、そこで変に頑張ると「中学受験の邪魔!」と半数以上の親から不評を買うので、そのデフォルトに甘んじている。
その手を抜く・サボることが当たり前と勘違いした中学受験しない子供たちは、机の前にボケっと座り出席さえしていればいい小学校の学習が習慣化される。「中学受験をした生徒としていない生徒の差/埋められないほど大きい」の通りです。
それで、中学校に入って、「おぼえろ!」「考えろ!」と言われても、何をどうすればおぼえられるのか分からないから、教科書をボ~ッって見て「おぼえました」という子供が量産される。考えろと言われても、頭の歯車を動かす労力の大変さに尻込みして、解答をボケ~ッを眺めて答えをゆる~く丸暗記しようとして、おぼえてもすぐに忘れる。「公立中学の下半分の落ちこぼれ感がハンパない/落ちこぼれた生徒の見分け方」のような奴隷用の生徒が量産されている。
小学校ではそんな学習で許されたんですよ。そこを暴くテストをしたら、中学非受験組は総崩れとなって「何を教えてるんですか!」って親から総攻撃を食らう。だから、お遊戯や観察ばっかりして、そういうことがバレないように教えて〇しかついていない訳の分からない通知簿をつけていればよかった。
しかし、中学校の5段階評価ではそうはいかない。でも、子供の体たらくに気づいてない親に通知簿1と2を連発すれば、「何とかせいやぁ~」と責めを受けるのは中学になる。中学にしたらそんな尻拭いは御免です。そこで通知簿を相対評価から絶対評価に変えて多くの生徒に3をつけられるようにした。「通知簿3の秘密/上位から90%の生徒で3がつく」の通りです。
こうなった原因/親編
まともに勉強できる子供の多くが私立中学に進んで、手を抜く・サボることがデフォルトになった子供が多くを占める公立中学では80%以上の生徒に3をつけていることを親は分かっていない。親世代には通知簿に2がついていた生徒に3がでつく。その現状をまるで分っていない。
原因は、テストの得点は聞くが、答案を見たことがないからです。応用問題で間違えているのではなく、国語の漢字、社会や理科の重要語句、数学の簡単な計算で一つ二つ間違っているのではなく、ほぼ全滅している。学習の細かいことが分からない親でも、問題用紙と解答を見比べればすぐ分かります。塾に連れて来て金を払う前に、2ヵ月に1回ほどの定期テストで答案用紙と問題用紙をボケっと眺めるだけで済むこんなことさえしていないから、子供の現状が分からない。
だから、漢字もおぼえる気もない子供を塾に連れて来て「勉強の仕方さえ分かればウチの子も・・」なんて言う。お子さんに不足しているのは、学習メソッドではなく、「まともにする」「キチンとする」と言う躾であり、「机の前に座っているからって、親は誤魔化されない」思い知らせることです。
公立中学・中堅私立の生徒を預かる塾の変化
公立中学や中堅私立の現状を分かっていない親は「通知簿3ならどうにかなるはずだ。」と思って塾に来させる。塾では、漢字もおぼえられない生徒に「漢字は書いておぼえろ!」「キチンと計算して答えろ!」「答え合わせをしたら解答を丸写しして終わるのではなく、間違えたところを考えろ。」と幼児教育のようなことをしないといけない。
でもね、ダレ切って反抗期を迎えた子供に、塾でお小言を言うくらいで改まると思います?ムリです。断言します「ムリです!」
だから、面倒くさい躾に延々と苦労し、全く成績が上がらない通知簿3の生徒をまともな塾は採らない。だって、まともに教えれば成績が上がる通知簿4の生徒や、放っておいても勝手に勉強して成績を上げてくれる通知簿5の生徒が来てくれるのに、取る理由はないからです。「通知簿3の生徒を採らない進学塾/その理由」
漢字も簡単な計算も、繰り返し教えても開いた口が塞がらないほど間違えてくる子供に必要なのは「勉強」ではなく、小学校時代に本来親と学校でしなければいけなかった「キチンとする」という躾です。子供が大人の言うことに服従する小学校時代に躾は終わらせて、中学生の反抗期には「頑張ることがデフォルト」にしておかなければいけなかったんです。「中学受験を利用して基礎学力を身につけよう!/指導不可能になっている公立中学の半数の生徒」を参考にしてください。
「頑張る躾」も出来ていない反抗期の子供を連れて来て「今すぐ成績を上げろ!」なんてムリゲーなんですよ。昔のように「キチンとおぼえて、基本問題はしっかり解こう。難しい問題はできなくていい。テストで70点代を目指して通知簿を4に上げよう!」なんてマトモな授業を通知簿3の子供に塾ではもう出来ないんですよ。こんな基本的な頑張りができるのなら、今の中学ではとっくに通知簿は4で埋まっています。
塾も採らなくていいのなら漢字もおぼえられない通知簿3は採りませんよ。それでも採る場合は、授業料徴収要員として、下位クラスに入れて放ったらかしにしています。「酷い塾が多くないですか(怒)?」の通りです。だって、熱心に教えても成績はあがらないから、塾はエネルギーなんて使いませんよ。教えれば成績が上がる上位の生徒を熱心に教えて進学実績を出してもらって、その進学実績を宣伝にしてまた生徒が集められればそれでいいんですから。「進学塾に下のクラスで入る愚かさ/公立中学の学力と入塾基準」「スイミングスクールと学習塾や進学校は同じビジネス手法です」の通りです。
何でそんな自明なことも分からない親が激増しているのか?
私のような苦いことを書くと多くの親からソッポを向かれ、ロクなことにならない。だから、講演に呼んでもらいたい評論家から生徒を確保したい塾、そして文句を言われたくない学校に至るまで、親がうれしい迎合的なことしか言わない。みんなそういうものだから、親の方はそんなものだと思っている。
学校では「漢字くらいおぼえさせろ!」って実際の子供の姿を3者面談なんかで親に言えば、「学校が何とかしろ!」と特大ブーメランを食らうから知らぬ存ぜぬを決め込む。塾は「任せてください~!」と親にいいことばかり言って、金をもらえればどうでもいいと思っている。評論家は親に嬉しいことを言って客を集めて講演で金を毟れればいいと思っている。
だから、普通の子供の学力改善のためには、小学校や幼児からの躾から入り直さないといけないなんて親は分かっていない。躾のできていない子供が、非正規奴隷養成コンベアの上にボケッーっと呆けて載っていることを理解できていない。