理解の壁/公立中学の通知簿3と4間に立ち塞がる途方もない壁

理解の壁とは?

抽象的な説明では難しいので、具体例を上げましょう。最近私が目にした例では、こういうものです。

中学1年生の理科の溶解度の問題です。(1)100g、40℃の水に硝酸カリウム飽和量までを溶かし、10℃まで下げました。硝酸カリウムは何g析出するでしょう?下のグラフを見て答えなさい。簡単ですね。表では40℃では約60g、20℃では約30g解けます。グラフの上で差し引き30g析出すると考えればいいわけです。これは多くの生徒ができます。なぜなら、グラフを見て見たことをそのまま答えればいいだけだからです。

ところが、(2)100g、40℃の水に硝酸カリウム50gを溶かし、10℃まで下げました。硝酸カリウムは何g析出するでしょう?となると通知簿3の生徒は出来なくなります。グラフでは40℃の水に硝酸カリウム50gの値に線が引かれていないので「なんで?」「そんな値ないやん?」「どうするの?」「分かれへん」になります。

なぜそんなことが起こるのか?

それは、通知簿3の生徒では溶解度という意味を理解せずに、グラフを見て、その映像や解き方を丸暗記しているだけだからです。見えているものとおぼえたものしか認識できない。理解という脳みその歯車は全く動いていないんです。

(2)が解ける生徒は、この飽和溶解度曲線では40℃の水に硝酸カリウム60gまで解けるから50gは全部解けるという、ワンクッションがで理解できます。なぜなら、溶解度の意味が理解できているからです。抽象的な理屈を把握することができるんです。

だから、通知簿3の生徒はこのグラフを教え込んで、暗記させて、問題が解けるようになっても、下のような表に焼き直されるとできません。グラフと表では見えるものが違うから、同じことが書いてあるものだと認識できないんです。

これが中2ぐらいでは

通知簿3の生徒に解ける・解けないの代表的な分かれ道が関数にあります。

(1)y=2x+1と並行で(1,3)を通る直線は? は、ほとんどの生徒ができます。関数の一般式で同じ傾きのy=2x+bという式を作って(1,3)という座標を代入するだけでOKだからです。目で見えるものと暗記で全部カタがつきます。

ところが(2)y=2x+1と並行でy=-X+3のx軸上で交わる直線は? は、通知簿3ではできません。y=-X+3のx軸上で交わる直線という、座標が明示されていない文章の意味を把握できないからです。「y=-X+3のx軸上で交点を取るんだから、y座標が0、0=-x+3すなわち(3,0)を通る。」というように抽象的な文章の説明を具体的な数字や座標に変換できないんです。理由は溶解度で書いたことと同じです。

だから、こういう生徒は(2)で「y=-X+3のx軸上で交わる直線」のグラフをかけないんです。自分が考えないといけない概念が把握できずに、「代入する」「同じ数字を当て込む」などと解法丸暗記だけで解いてきたからです。だから多くの生徒は「y=2x+1と並行でy=-X+3のy軸上で交わる直線は?」の問題と区別もできずにy=2x+3のような答えを書きます。y軸上で交わる直線はy切片を代入すればよいだけなんで(1)と同様に通知簿3丸暗記でできます。問題の違いも意図も考えずに解法丸暗記を炸裂させるんです。

何度教えても、「じゃあ、何を代入するんですか?」「その数字はどこに書いてるんですか?」しか考えないので、自分で解法を1クッション分導かないといけない(2)はできません。この理解の壁が通知簿3と4の上の方の差です。多くの生徒が関数を苦手とする理由でもあります。

ここで躓く生徒は、これ以後の数学は全滅します。高校なんかに入ると数クッションだらけになりますから。だから「中学の数学などで人から教えてもらわないとできない生徒は理系は無理」と言っているんです。「文転(文系へ転向)する生徒の末路」に書いた通りです。

だからいくら教え込んでも、成績が上がらない

だから、これらは「学習方法」の問題でも、「教え方」の問題でもないんです。生徒自身の脳みその歯車が錆びついていて、見えるものしか分からないのが問題なんです。もちろん、そういう生徒にも「溶解度というのは・・・」「x軸上で交わるんだから・・」とこんこんと意味を説明しますが、目で見て直接形として分かるものしか認識できない彼らには無駄です。そういう抽象的な説明を聞くと頭がフリーズして目が飛んでしまいます。

なぜフリーズして目が飛ぶのか? 能力不足のパソコンで重たい作業をさせてフリーズするのと同じです。今まで目の前に差し出されて見えているものをそのままオウム返しするような軽作業で許されてきたから、抽象的な理屈を理解するために脳みその歯車を動かすことが途方もなく重いものになるんでフリーズするんです。そして、多くの生徒は、その脳みその歯車を動かす経験がないから、何をどうすれば動かせるのかも分からないので目が飛ぶんです。

私の解決方法/文句を言おうが泣こうが追い込みます

学校の先生なら1回説明して分からなかったら「勉強不足」と言っておけばいいんでしょうけれど、「プロが教える個別指導」と謳っている私の場合そうはいきません。ではどうするか?

こんな生徒普通に教えても、分からないままです。だから、締め上げてできるようになるまで、何度も説明し、やらせ続けます。けれど、説明を繰り返して分かるようになるとは思っていません。何度もトライさせて、自分でやらせて、「そうか!」と生徒が言う瞬間を私は待っているんです。追い込んで考えさせて、自分で脳みその歯車を動かす瞬間を待っているわけです。この見込みがある生徒が「どうにかできると思います。」と私が親御さんに言って預かる生徒です。

私はその言葉に責任があるので、生徒が「嫌や」と言おうが泣こうが、やらせます。だから、そんなことで文句をいう保護者の子供は預かりません。そんなことで文句を言う甘々の育て方でこんな状況になってるのがお分かりにならないんですかね? 私は親が本来すべき子育ての汚れ仕事を引き受けようとしているんです。そんなことで文句を言ってこないでいただきたい。

そりゃあ、もっと優しくできればいいんでしょうけれど、こういう生徒は優しくして「頑張ってね」なんか言おうものなら、「この先生、楽勝!」ぐらいにしか思いませんので、「やる気を醸成する!」とか「生徒の自主性を育てる」とか言う聞こえの良い塾の宣伝のようなことをしていてもダメなんです。

どうしてもそこまで行かない生徒には、「目で見えるもの」しかやらせません。その場合親御さんには「成績を上げるのは難しいと思うが、それでもいいですか?」と言って、納得いただけた場合のみお預かりします。

脳ミソの歯車を自分から動かせるようになれば、中学校の学習なんか90%は片が付きます。「教え方」なんかが関係する高度な学習など、公立中学や高校受験ごときのレベルでは存在しません。「中学3年の冬休みまで本気を出さない子供たちの将来」「中間テストの結果から見る成績中位と上位の差/秋風が身に染みるぜ」「成績が伸びない子供の特徴/阪神の藤波投手に学ぶ」に書いた通りです。

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芦屋で500人以上、個別指導20年のベテラン講師が、毎日・全教科、中学生と高校生を指導します。御影高校・神戸高校、関西学院・同志社・神戸大学・大阪大学を目指す特進個別塾です。