嫉妬と欲に塗れたロード・オブ・ザ・リング/メトロポリタン・オペラで知るアメリカの凄味

祖先の英雄譚が国を滅ぼした/ルートヴィヒ2世の故郷

日本にこんな美しい田舎町ありまっか? 2分くらいから写される城は、ディズニーランドのお城のモデルとして有名です。別名、白鳥の城。

19世紀、オタクを拗らせたのバイエルンの国王は、神話の騎士物語にハマり、その世界観を現実化させるために城を次々に作り、ワーグナーに贅沢な劇場を造り騎士のオペラを作曲させました。ワーグナーの大作オペラ「リング」と、映画「ロード・オブ・ザ・リング」は同じ神話を題材にした似通ったお話なのです。

この結果、王はバイエルンの財政を破綻させ幽閉されます。そして、ビスマルク率いる北隣のプロシアに降伏し、大国ドイツの誕生になります。

この王が作ったバイエルンのバイロイトにあるワーグナーオペラ専用のホールでは、今でもワーグナーの聖地として音楽祭でワーグナーオペラが演奏されます。世界で一番チケットが取りにくく、高価な演奏会です。

この王が騎士物語とワーグナーに狂うきっかけになったのが、親族で心を唯一許していたエリザベートがハプスブルグ家の当主に見初められて結婚してしまったことだと言われています。その辺りのお話がこの映画で描かれています。もちろんエリザベートとは宝塚なんかでも人気の、絶世の美女王妃エリザベートのことです。

若かりし頃のエリザベート・・・ウエストが・・

因みにエリザベートは、この若い頃のスタイルとウエストのサイズを一生守り通すために、常に過酷なトレーニングを続けていて、お供しなければいけなかった従者はへばり切っていたというお話です。どうですか!「詐欺だ!」と罵り合っているお母さんとお父さん!

度肝を抜かれたリング

ところが、高価な聖地のオペラでも壮大な神話物語を舞台で再現するのは無理なので、ワーグナーの舞台演出はチンケな偽物感丸出しの様相になります。特にロード・オブ・ザ・リングのようなコンピューターグラフィックなどの映像の進歩で、私たちの目が壮大な物語に慣らされて以降、劇場の英雄譚は見るに堪えないものに感じるようになった。

そこで、バイロイトを始めヨーロッパの劇場では舞台設定を抽象化してしまい、ビジネススーツとワンピースを着た主人公が宇宙船で中世の神話を演技をするなど、もう滅茶苦茶な様相を呈しています。

でも、アメリカは金と物量投入で正面突破しました。演出はシルク・ド・ソレイユの監督です。実際に劇場で上演されたとは信じられない出来です。

これオペラの舞台装置ですよ。信じられます? この舞台の前には、本当にオーケストラ・ピットがあって、観客を入れて演奏してるんです。吊られて歌わないといけない歌手は大変だったと思います。第1話、ラインの黄金。
超有名なワルキューレの騎行。こんなこと、アメリカ人しか思いつかないし、できない。こんな国と戦争をした日本はバカだと思います。第2話ワルキューレ、指揮者はレヴァイン

これほど素晴らしいワーグナーは見たことがない。指輪、全4話、15時間、DVDを即買いしました。

因みに、ワルキューレとは、神が奥さん以外の女性に産ませた娘たちの軍団で、天馬に乗って戦場に赴き、神のために戦って死んだ戦士の遺骨を集めて回るのが仕事です。この映像は天馬に乗って戦場に着いて遺骨を拾い上げるシーンです。

因みに、この軍団の長女を憎んだ奥さんの因果、そして欲にまみれて人を欺いた神の強欲が神々の一族を滅ぼすというのがオペラのストーリーです。だから、最終話の題は「神々の黄昏」です。題名に高尚な意味はありません。

私、こういう指揮者って結構好きなんです/フルオケが室内楽団のマネをする必要はない

レヴァインが心臓発作で倒れて、急遽この3話と4話の指揮を担当して絶賛された指揮者が、次のNHK交響楽団の首席指揮者になります。この動画も素晴らしい演奏です。

オケ自体の配置もあるんでしょうが、ルイージって「両翼配置にして、アンサンブルを際立たせて・・」ってしないですよねぇ。それにしてもエエ指揮者ですな。

この指揮者の音って、透明感があって細いんですよ。それに各アンサンブルのフレージングにものすごく慎重です。指揮を見ていてもよく分かる。それで、結構どのアンサンブルもあけっぴろげに鳴らしているのに、そうは聞こえない。音がひっちゃけないように慎重にマスの響きをまとめている。

フルオケのオーソドックスな演奏に聞こえてもアンサンブルがよく分かる。それが際立つように、テンポ設定も慎重にしています。イヴァン・フィッシャーと似たところがあります。みんなの期待値通りのオーソドックスな味付けをしつつも、決して細かい素材の味を殺さないで食べる人を驚かせる本当のプロの料理人ってな感じでしょうか?

ベルリン・フィルのように大きな編成を取れるフルオケが、何でもかんでも室内管弦楽団のマネをして古典音楽を演奏すればいいってもんじゃないと思うんですよ。

ところでいくらルイージがリハーサルしても、N響の金管が繊細な響きのすべてを台無しにする気がするんですよね。それにN響は指揮者の言うことを聞かないで自分たちのアンサンブルを崩さないですからねえ・・・最近特にひどいですから・・ せっかくの指揮者の注文を滅茶苦茶にすることが多い。

それに、この指揮者、 メッチャ、プライドが高い。 この指揮でも、オケに物凄く睨みを利かせているのが分かります。オケを完璧に支配下に置こうとしている。けどその指揮が素晴らしいから、オケが全力投球で応えて素晴らしい演奏になっている。 「オレ様」N響はしまへんで、そんな演奏。

世界で最高峰のオペラハウス、ドレスデンの歌劇場と大喧嘩して辞表を叩きつけたことがあるくらいこの指揮者はプライドが高い・・・温厚なマズアでもブチ切れて本番で演奏やり直させた自己中のN響、そのくせドレスデンのオケとは比べ物ならないくらいダメダメなんですから・・・ルイージなら本番まで行かないんじゃない?

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芦屋で500人以上、個別指導20年のベテラン講師が、毎日・全教科、中学生と高校生を指導します。御影高校・神戸高校、関西学院・同志社・神戸大学・大阪大学を目指す特進個別塾です。