「個性的な子供」の場合、塾は無力ですよ／親心で間違える学校の先生

最初は、親御さんも理解の上でお預けになります

昨年、塾再開後、まだ生徒数が少なかった時期に、中学受験を成功させて程々の中学に進んだ子供を連れてお母さんが体験授業にいらっしゃいました。

体験授業の結果から、学力はソコソコあるが、ある一定の特徴が子供にあることが私にも分かりました。私は、少し学習障害の気があると思いお母さんにも正直にお話しました。

それで、「グレーゾーンだということは理解している。医院にも行った。多くは求めていない。」「子供の中学受験の手が離れて、私も職場復帰したいので、預かって欲しい。」というお母さんの言葉でお預かりすることにしました。

ところが、子供は段々本領を発揮し出す

そう言うことで、塾に来だした子供ですが、最初は私と話し合って学習を進めて過不足のないことはできていたんですが、徐々に自分がしたいことだけをし始めました。

学習障害の気があると言っても、ソコソコ頭の回転がある子供は、中学受験で親にずっと押さえつけられてきた経験から、巧みに言い訳をし、他の子供も教えないといけない私が目を離したすきに教科を変え、自分の思う通りに学習を進めようとします。

こういうことに、本当に今の子供は頭が回るんです。「塾講師が一番疲れる子供　中国の領土拡大を熟知する子供たち」に書いた通りです。中学受験が終わった途端、毎日開いていて大人の講師が教えている私の塾に親が放り込むのももっともだと痛感しました。

このお子さんの指導の難しさは毎月の報告書にも書きましたし、お母さんとも電話で話もしました。優位に事を進めようとする学習障害グレーゾーンの子供は、正直塾の指導の範疇に収まり切れませんでした。しかし、この子供を育てるのにとても苦労したと事あるごとにおっしゃっていたお母さんには、塾の苦労も分かってくれていると思ってお預かりしていたんです。

今度は、親が本領を発揮し出す

そして、この段階でこのお母さんの職場の復帰先が分かったんです。小学校の先生だったんです。こういう子供の対処は一番熟知している方です。私は、猶更「じゃあ、分かってもらえている。」と思っていたんです。

ところが、子供を預かって3カ月もしたころ、「うちの子は言えばわかります。もっとキチンと教えて下さい。満遍なく学習できないんです。」とお母さんが言い始めたんです。それで、少し厳しくすると「おじいちゃんやおばあちゃんに教えてもらった方がよく分かると子供が言っています。」と言い出したんです。厳しくされた塾に嫌気が差して、子供が逃げを打っている言葉を教師のお母さんが丸呑みしてるんです。私はあきれ果てて言いましたよ。

「お話もしてきた通り、自分の好きなことをやろうとするこの手のお子さんを操縦するのは、難しいです。それに、中学受験でお母さんに押さえつけられてきて、こちらの思惑から逃げる技を熟知しています。他の子供を教えながらでは、今以上のことはムリです。それは、育てられてきたお母さん、教師でもあるお母さんが一番ご存じでしょう。」「それに、学校や他の塾とは違い、私が目を光らせているここでは、他の子供からいじられたり、イジメられたりすることもない。それでもご不満なら、お辞めください。」と私は正直にいました。

それで、塾を辞めて行かれました。どこかの集団式の塾で、あるいはアルバイトの大学生が教える個別指導塾で、こういう子供を操縦し制御できるところがあるんでしょうか？　小学校の先生だったお母さんが、自分の子供を付きっきりで教えても尚、相当苦労したと言っておられるんですから。

そして、その子供がこれから思春期・反抗期を迎えるんです。操縦はとてつもなく難しくなるでしょう。それは他の生徒も同じです。集団塾では、学校と同じ様にいじられるでしょうし、それはエスカレートするでしょう。

そんなことは、教師であるお母さんが一番よく分かっているはずです。でも、自分の子供のことになると素人のお母さんと変わりない盲目になられる。

学校の先生は親の願望の前に一般人になる

子供のことを熟知している学校の先生も、それは所詮他人の子供のことを客観的に判断しているだけであって、自分の子供のことになるとその辺りの素人のお母さんと全く変わりはありません。

私はこういう学校の先生を数人見てきました。っていうか、学校の先生の子供を数人しかお預かりしたことがないんです。その中で客観的に子供を見ていたのは、ひとりだけです。「グローバリストの選択／先生って本当に忙しいの？」に書いたお母さん先生だけです。ここのお子さんは、兄弟3人とも教えました。全員優秀でした。

優秀だからこそ、親が色々な欲目や願望なしに見れたのかもしれません。けれど、子供が「普通」「個性的」な場合、親の願望からあがき続けて、結局はより悪い結果を産むその辺のお母さんと何ら違いはありません。

まあ、部下の若い子を正当に評価できるお父さんが、自分の子供のことになるとメチャクチャなことを言い出すのも同じですけれどね。